モンスターラボホールディングス 久良木 慎二:「アジャイル」と「バックログ」を利用することが出来たのは、まず日本郵便の理解が得られたことが大きかったわけですが、この二つはデザイン思考を用いるということとセットになっています。
「アジャイル」開発では、プログラムを実装して検証し、修正・改善を繰り返すわけですが、実装する内容はタスクに切り分けてタスク管理ツールの「バックログ」に登録して管理します。
このバックログに登録された内容を日本郵便も含めた開発チーム全体で共有し、やる・やらないの判断をし、優先順位を決め、実装を繰り返していくわけです。まさにデザイン思考のプロセスそのものになります。
結果、仕様書通りにガチガチに作ることなく、ユーザー視点に立った開発が出来たと思います。
もちろん、アジャイル開発は万能ではありません。「アジャイル開発が適応する開発規模」が存在すると考えています。このあたりは、モンスターラボの知見の蓄積が存分に生かせたのではないかと思います。
物流と金融が同居する稀有な空間
──最後になりますが、今回の「e発送サービス宛先ご指定便」は、日本郵便とモンスターラボの連携の第一歩だったと思います。今後の連携やシナジーについての見立てをお教えください。モンスターラボホールディングス 宇野 智之:日本郵政グループには、日本郵便の郵便事業の他にも、ゆうちょ銀行の銀行や、かんぽ生命の保険といった金融事業もあります。物流にとどまらず、デザイン思考を用いて、あらゆるサービスの課題解決とユーザーの利便性を追求していけると嬉しいですね。
物理的なインターフェイスでいうと郵便局という拠点にも注目しています。歴史的な経緯もあると思いますが、物流と金融が同居している稀有な空間です。ここにもデザイン思考が生かせる場所があるのではないでしょうか。
人の面では、デザイン思考を広めるための人事交流や研修などもやっていけると、モンスターラボの持つケイパビリティを日本郵政グループの知の解放に生かしていただけるのではないかと思います。
また、モンスターラボでよく「職務を越境せよ」と言います。たとえば、ユーザーインターフェイスを開発するデザイナーがいれば、エンジニア領域にも意見するように促す、また、その逆も然りです。人的交流を介して、そのような企業文化含めて、日本郵政グループの成長に寄与することができれば、それ以上の喜びはありません。