ピッチは3分または1分という短さですが、ほとんどの人が1秒狂わず時間ぴったりにプレゼンします。SXD Ai社CEOのシェリー・シュウ氏のプレゼンは、私がこれまで見たなかで、間違いなく一番素晴らしいものでした。
発声、スピード、イントネーション、間の取り方、身振り手振り、会場とのアイコンタクトなど、計算されつくしたもの。SXD Ai社はカテゴリー優勝を獲得していましたが、質疑のやり取りも含めて、これを見た人なら全員納得の受賞だったと思います。
ピッチ経験者ならわかると思いますが、与えられた時間ピッタリに終えるには、大変な量の練習が必要です。後で関係者に聞いたところ、ファイナリストに選ばれたら、本番前のコーチングプログラムに参加し、約30名の起業家や投資家チームから事前指導を受け、徹底的に練習するそうです。日本のピッチではあまり聞いたことがないですが、その事前指導と徹底した練習が、この本番のプレゼンの質に繋がっているのだと理解できました。
イベント開始前にはアップテンポの音楽が流れ、さらに司会がテンポ良く会場に語り掛けて盛り上げます。そして完成度の高いプレゼンが披露され、その後はベンチャーキャピタリストを中心とした審査チームから6分間、質問が飛び続けます。その白熱のやりとりは聞いていて飽きることがありません。SXSWは音楽の祭典をルーツとしていますが、すべてのイベントが音楽ライブを彷彿させます。
今回のカテゴリー優勝のスタートアップの中には、いま注目の生成AIを用いて3Dアニメーションを作るPentoPix社、サステナブルを軸にした分野特化型ソーシャルネットワークのAMA社など、まさに旬の分野を牽引する企業がいくつもありました。AMA社はブラジル発スタートアップであり、カテゴリー優勝が発表された瞬間の、チームの大歓声とダイナミックな喜びの表現は会場を大きなエネルギーで満たしていました。