銀行免許を持たないアップルは、ゴールドマン・サックスとの提携により銀行サービスを開始する。フィンテック用語で言えば、アップルはChimeやRevolutのような「ネオバンク」だが、そのブランド力は、iPhoneの累積販売台数が20億台以上であることを考えると、比類ないものだ。
ウェドブッシュ証券のアナリストのダン・アイブスは「アップルはワープスピードで進み、多くの銀行は隣の車線を時速70キロで走っている」と述べている。
この新しい高利回り貯蓄口座は、アップルのクレジットカード「Apple Card」を持つ顧客だけが利用でき、ユーザーは数分でアカウントを設定でき、デイリーキャッシュと呼ばれる特典が自動的に口座に振り込まれる。
アップルは昨年からiPhoneから直接カード決済ができるタップ・トゥ・ペイを開始し、先月は消費者が金利や手数料なしで4回に分けて支払うことができる後払いサービスの「Buy Now Pay Later(BNPL)」を開始した。このような金融商品を通じて、アップルは顧客の生活のあらゆる面に溶け込もうとしている。
ゴールドマン・サックスは、これらのサービスで裏方に徹している。これは、伝統的な金融機関が拠り所としている大理石の柱や由緒ある歴史に、顧客がもはや価値を見出さないことを意味する。創業150年のゴールドマン・サックスは、他のフィンテック企業にサービスを提供するブランド力のないBaaS(バンキング・アズ・ア・サービス)のプロバイダーであり、本質的にはインフラのプレイヤーなのだ。
「タップ・トゥ・ペイ」の独占の強み
アップルは、自社のデジタルウォレットを、貯蓄やピア・ツー・ピア送金、店舗でのタップ・トゥ・ペイなどを組み合わせた、消費者の金融生活における完全なダッシュボードに位置づけようとしている。このロードマップは、2004年にデジタルウォレットとしてスタートした中国のアリペイ(AliPay)のような、スーパーアプリに発展するかもしれない。その一方、伝統的な銀行は魅力的なユーザー体験を生み出すことに苦戦している。
アップルのデジタルウォレットに対抗するのが難しい理由の1つに、アップルが店舗での会計時にタップ・トゥ・ペイを可能にするiPhoneのNFC(近距離無線通信)チップへのアクセスを外部企業に開放していないことが挙げられる。
アップルは、この仕組みを独占しているため、カードの発行銀行と交渉する際に、圧倒的に有利に立てる。2014年にApple Payが始まったとき、銀行はクレジットカード決済額の0.15%をアップルに支払うことに合意したとウォール・ストリート・ジャーナルは報じている。