「2人に1人ががんになる時代」と言われて久しく、2017年のデータに基づく推計によれば、一生の間にがんと診断される確率は、男性で65.5%、女性で50.2%だ。
もちろん、罹患率は男女ともに年齢に比例して上がっていく。男女別でも異なり、乳がんや子宮頸がんで、40歳代あたりまでは女性の方が高いが、それ以降は男性のほうが高くなる。
がんは不治の病ではなくなり、生存率も伸びたが、新たな懸念も浮上してきている。それは、治療費をどう捻出し、治療に伴う収入減をどう補うかだ。
がん診断後の保険料支払いに悩む人も
がん治療費の捻出は、基本は預貯金などの貯蓄からだ。だが、老後資金や子どもの教育資金など目的のある、今後の支出に備えて積み立ててきた大事な貯蓄を、想定外の病気の治療のために取り崩すのは避けたい。それ以前に、取り崩すほどの貯蓄を持っていないという世帯も珍しくない。
そんなときに心強いのが「保険」。がん保険や医療保険のなかには、がんと診断されると一時金が受け取れたり、入院や手術時などに給付金が受け取れるものがある。
だが、一般的な保険契約では、がんと診断された以降も保険料を支払う必要があり、それは意外に知られていない。保険に明るく、がん診断時に保険料の払込みが免除になる特約を付けている人の場合であれば、以後の負担は不要になる。そうではない場合は、治療費がかさむなか、月々の保険料の支払いを続けられず、保険料負担の重い生命保険などについて「解約」や「契約者貸付」に踏み切る人も少なからずいる。
そうした生命保険の見直しの効果を図表3にまとめた。生命保険を「解約」すれば、以後の保険料支払いは無くなる代わりに、保障も無くなる。終身保険など貯蓄性があるタイプの生命保険では、まとまった一時金として解約返戻金が受け取れる。
「契約者貸付」は、解約返戻金がある生命保険の場合に、解約返戻金を担保にその7~9割程度を借りられる制度だ。基本的に借りたお金は返す位置づけのため、返済できない可能性を踏まえ、金利分を差し引かれる。
保険契約は継続しているので、契約者貸付を利用後もこれまで通りに保険料を支払い、保障は続く。