さらに政府は日本が目指すべき未来社会の姿として、現実と仮想空間を一体化させ、社会問題の解決と経済発展を両立する「Society 5.0」を提唱。その実現には、環境情報や機器の作動情報、人の情報などといった現実空間の膨大な情報を仮想空間に集積する必要があるが、人の情報については個人情報保護法の観点から、集積に課題があった。
そうした中、NTTドコモは4月25日、スマートフォンや監視カメラなどの映像から、個人情報を削除し、人物の行動や興味・関心を可視化する技術を開発したと発表した。
同技術では、映像から人物の骨格情報などの必要なデータを取り出した後、顔や服装などの個人情報を自動で映像から削除し、人物の骨格を線で描画。プライバシーを保護した上で人物行動を可視化できる。さらに、削除した人物の背景を自動生成するため、モザイクなどの加工映像と比べ、より自然な仕上がりになるという。
また、撮影映像から人物の滞在時間や目線、物体タッチの情報を取得し、自動作成した3次元のバーチャル空間上に投影することが可能。例えば、コンビニなどの店舗で活用すれば、顧客人数のカウント、性別・年代推定に加え、顧客の商品タッチ・目線、店内動線・立ち止まりのヒートマップを取得できる。それらのデータを生かして、棚割の変更や人流改善、リアルタイムでの店頭サイネージ変更など、高度な店舗マーケティング施策への活用も期待できる。
ドコモグループの法人事業を担うNTTコミュニケーションズとコクヨは、4月から同技術を用いてオフィス空間内の人物行動可視化に関する実証実験を開始。コクヨのオフィス内で、人物の歩行と立ち止まり箇所のヒートマップなどを取得し、人流や行動を解析。同技術の有効性を検証している。
ドコモは同技術を活用し、デジタル化社会でさらなるプライバシー課題の解決を図るほか、同技術とメタバースを融合させることも検討。それによって、実空間で行動する人々がバーチャル空間へ転写され、バーチャル空間上の人物と共に楽しめるテーマパークなど、新しいサービスを実現できる可能性もあるという。ドコモは同技術について、2023年度末の商用化を目指している。
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