スーダンからの退避、日本が今やらなければいけない準備とは

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政府は25日、国軍と準軍事組織の戦闘が続くスーダンから、日本人や外国籍の家族計58人が国外に退避したと発表した。うち、45人は首都のハルツームから東部の港町、ポートスーダンへ陸路で移動し、航空自衛隊のC2輸送機で周辺国のジブチに到着した。韓国政府も、韓国人28人をハルツームからポートスーダンまで車両で移動させる際、日本人5人が同行した事実を明らかにした。日本政府は陸路移動の詳細について明らかにしていない。アフガニスタンの教訓を活かし、いち早く輸送隊をジプチに展開したこと、関係国との連携を積極的に図ったことが作戦成功の要因であるものの、同じルートを採った韓国政府の説明を聞いてみると、今の日本では自力で解決できない問題が多数あったことがわかる。

韓国政府は国民との約束に基づく行動だとして、今回の退避作戦を「promise(約束)」と名付けた。説明によれば、当初はハルツームの国際空港から空路で退避することを検討したが、国軍と準軍事組織の戦闘が続いているうえ、空港施設の一部が破壊されるなどしたため、安全が確保できないとして断念した。陸路移動で、様々なルートを検討した結果、韓国による原子力発電所輸出などで最近急接近しているUAE(アラブ首長国連邦)の主導する移動案を受け入れることにしたという。UAEは直線距離で約840キロ、安全なルートを選んだ結果、最終的に約1170キロに及ぶ移動距離のなか、国軍と準軍事組織双方と調整し、安全確保に努めたという。4月23日午後、ハルツームの韓国大使館を出発し、当初は24日午前にポートスーダンに到着予定だったが、「車両の故障や不測の事態」(韓国政府当局者)が発生したため、同日午後9時40分に到着した。

韓国はこの過程で、外交ルートはもちろん、軍事面では、ジブチの米軍基地「キャンプ・レモニエ」に連絡将校を派遣したほか、UAE、サウジアラビア、エジプト、米国、エチオピアの駐在武官を動員した。国家情報院も米国の中央情報局(CIA)と連携して、様々な情報を獲得したという。日本人5人は、日本政府が指示した集合場所にたどり着けず、韓国の車列に同行することになったようだ。

スーダンからの退避は、今の日本が抱えている様々な課題を改めて浮き彫りにした。まず、装備の問題が挙げられる。米軍はいち早くジブチから大型輸送ヘリ3機などの部隊を派遣し、ハルツームの米国大使館に着陸させて、外交官らをジブチに移送した。高田克樹元陸上総隊司令官は、「キャンプ・レモニエは、アフリカにおける米軍最大の基地だ。V22オスプレイや大型ヘリも展開している。自衛隊が派遣しているC2輸送機などは長さ2500~3千メートルの滑走路が必要だが、回転翼のヘリなら着陸できる場所が大幅に広がる」と語る。昨年12月に閣議決定された国家安全保障戦略には、在外邦人等の保護のための体制と施策の強化をうたい、「ジブチの活動拠点の活用」も明記されているが、今回の退避活動は間に合わなかった。
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文=牧野愛博

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