食&酒

2023.05.06 17:00

現代アートの真の価値|大林剛郎×小山薫堂スペシャル対談(前編)

科学技術の発展のために

小山:店の前に、門番のようにアントニー・ゴームリーの裸体の彫刻が立っているじゃないですか。しかも店に入るとまずギャラリーがあって、作品が飾られている。気に入ったら購入もできる。これは現代アートのコレクターでもある大林さんだからできた、名アイデアですよね。
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大林:ゴームリーが展示されていると知って、飛び込みで来店されたお客様もいらっしゃるんです。ギャラリーは、ウェイティングバーとしての機能もあります。

小山:席への案内を待っている間に、アート作品を見ながら一杯やるのは、また別の高揚感がありそうですね。「アート」は食や店や街の文化を牽引し、人を呼び集める効果があると実感されていますか。

大林:アートは、単に文化を発展させるだけでなく、科学や技術を発展させるために必要です。ノーベル生理学・医学賞を受賞した大隈良典さんとお話ししたとき、「日本の研究者は、テーマの決め方や論文はうまくなったけれど、人と違うことをするのが下手だ。世の中の役に立つのもよいが、やはり人と違うことを目指すべきだ」とおっしゃっていました。日本の産業界も世界と比べると閉塞感に悩まされていますが、そんないまだからこそアートあるいはヒューマニティを取り入れ、新しい技術を世界に向けて送り出さないといけないと切実に感じます。
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小山:大林組は技術者の集団ですが、アートに接する特別な機会はあるのですか。

大林:東京本社には、草間彌生、ダニエル・ビュランなど世界的に評価の高いアーティスト18人による作品が、大阪本店の食堂には京都芸術大学出身の若手5人の作品が展示されています。社員が日常的に現代アートに触れることで、設計者としての感性をさらに磨いてくれたら、こんな嬉しいことはないですね。(次号に続く)

今月の一皿

筆者の好物オニオンスープをベースに、料理人ゴローがアレンジした「ロールキャベツ」。味の決め手は少量の赤ワイン!

blank

都内某所、50人限定の会員制ビストロ「blank」。筆者にとっては「緩いジェントルマンズクラブ」のような、気が置けない仲間と集まる秘密基地。

小山薫堂◎1964年、熊本県生まれ。京都芸術大学副学長。放送作家・脚本家として『世界遺産』『料理の鉄人』『おくりびと』などを手がける。企画・脚本を担当した映画『湯道』が全国公開中。2025年大阪・関西万博ではテーマ事業プロデューサーを務める。

大林剛郎◎1954年、東京都生まれ。大林組代表取締役会長。慶應義塾大学卒業後、大林組に入社。2009年より現職。アートに造詣が深く、森美術館理事、原美術館評議員、英テート美術館や米MoMAのインターナショナル・カウンシル・メンバーを務める。

写真=金 洋秀

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