FOXやその他の放送局の契約交渉に詳しい関係者によると、タッカーは司会を務めてきた「タッカー・カールソン・トゥナイト」への出演で、年間1500万〜2000万ドル(約20億〜27億円)を稼いでいた。業界でも有数の高給取りだったという。「彼ほど影響力のある人はほかにいない。これ(降板発表)の前までは、どこにでも移籍できた」
カールソンの番組は2017年以来、平日午後8時(東部時間)代の放送枠を占めており、昨年は平均視聴者数が330万人と、ケーブルニュース局の番組としては2番目に多かった。カールソンは2009年からFOXニュースで勤務し、キャスターを引き受ける前は政治アナリストを担当していた。
FOXニュースは短い声明のなかで、同局とカールソンが「別々の道を行くことで合意した」とだけ述べ、退局についてそれ以上の説明はしていない。
カールソンの出演は先週金曜日(21日)が最後になったが、カールソンはそのなかで視聴者に番組終了を告知したり、自身の退社を示唆したりはしていなかった。CNNとバニティー・フェアは匿名の情報源の話として、カールソン氏は発表当日の月曜日(24日)の朝に決定を知らされたと伝えている。
FOXニュースは2020年の米大統領選に関する報道をめぐり、投票機メーカーの米ドミニオン・ボーティング・システムズから名誉毀損(きそん)で訴えられ、先週に7億8750万ドル(約1060億円)の支払いで和解したばかりだった。この訴訟で裁判所に提出された文書によると、カールソンを含むFOXのトップキャスターや幹部は、同局が報じていた投票不正の主張を内輪では繰り返し非難していた。
今後の身の振り方は?
カールソンの今後の身の振り方や収入は、降板理由が何だったのかで変わってくる。関係者の話では、正当な理由による解雇であれば、FOX側は先週末の最後の出演以降、カールソン側に一銭も支払う必要はない。一方、円満な関係解消だった場合、カールソンは契約期間中、ほかの場所で働くことはできないが、その間FOX側から給与を受け取ることができる。カールソンの弁護士は、契約書に記された全額の一部のみを一括で受け取る代わりに、ほかの場所で働くことができるようFOX側と交渉する可能性もある。
カールソンの契約期間がどれほど残っているのかは不明だ。ニュースキャスターの契約期間は1回3〜4年が普通だとされるが、バニティー・フェアによるとカールソンは2029年までの延長に向けて契約更新を交渉していたという。