AI

2023.05.11

原点はインド。ロボット開発者の「人を惚れさす」ためのイノベーション

千葉工業大学 未来ロボット技術研究センター所長 古田 貴之氏(右)に話を聞いた。

今や“ロボット”という存在は、SF映画やアニメの中で親しまれるだけのものではなくなった。普段の生活でも目にしたり接したりする機会が多いものになっている。

留守中に家を掃除してくれるものや、ペットやパートナーのような存在になってくれるもの、警備や見回りを担ってくれるものから宇宙空間での危険作業をこなしてくれるもの……。

姿形や用途はさまざまだが、ロボットはテクノロジーの進歩と比例して、人間社会における実装の場を拡げている。

人間とロボットの関係は今後どのように変容していき、そしてどのような関係を築き上げていくべきなのか。映画「TANG タング」のロボット監修なども手がける、千葉工業大学 未来ロボット技術研究センター(fuRo)所長の工学博士・古田 貴之氏に話を伺った。


千葉工業大学 未来ロボット技術研究センター所長・古田 貴之氏

幼少期のインドで学んだ2つの教え

——最初に古田さんにお聞きしたいのですが、どんな子ども時代を過ごして、なぜロボットに興味を持ち始めたのでしょうか?

家庭の関係で2歳から8歳頃までインドにいたんですよね。最初に覚えたのがヒンドゥー語で、次が英語だったから、いまだに口が日本語に慣れなくて上手く呂律がまわらない。

その頃、インドの自宅の近くに藤井日達というお坊さんの道場がありました。日本山妙法寺を建立したり、ガンジーとともに非暴力主義の活動をしたりしていた方です。

そんな方とひょんなことで知り合いまして、ほぼ毎日道場に通うようになった。一日5〜6時間座禅して、お経を唱えて。まぁ、最後にお供え物をくれるから、それが目当てみたいなところもあったんですけど。この藤井日達さんから教わったことはいまだによく覚えています。

——具体的にはどのようなことを教わっていたのでしょうか?

よく口を酸っぱくして言われていたことは二つ。

ひとつは「この世の中は見えないものにこそ真実がある、目に見えないものに目を向けないと、真実は見えない」ということ。モノをもらって嬉しいのはそのモノ自体じゃなくて、“気持ち”をもらったから嬉しいんだよ、真実を見るようにせよ、深く深く心を張り巡らせてみよ、と。

聞き手のKonel/知財図鑑代表・出村光世

もうひとつは、「この世の中の森羅万象すべてが無限につながっている」ということ。この世に偶然はない。世の中の分子や原子はすべてつながっていて、自然に動いている。しかし、その物理法則を人間がすべて把握することはできないから、偶然として片付けてしまうし、狭い一部を切り取って見てしまうのだと。

そのうえで、こう言われました。

「たくさんの違う考えを持つ人と友達になり、知り合いになりなさい。君が何をしているかよりも、誰が何を知っていて、その人とどう違うかが重要である。いろんな人のいろんな方向の視線を分かち合えば、たくさんのモノが見えてくる、一人では真実に到達しない」

これが僕の原点であり、多様性というものを学んだ原体験ですね。
次ページ > 「ロボット博士」を目指したきっかけ

文=出村光世

ForbesBrandVoice

人気記事