宇宙

2023.04.30 15:30

地球外生命体を重力レンズで観測する画期的な宇宙天文台

皆既日食で月の周囲に見える太陽コロナ。1998年2月26日、グアドループ(Getty Images)

皆既日食で月の周囲に見える太陽コロナ。1998年2月26日、グアドループ(Getty Images)

NASAジェット推進研究所の宇宙物理学者スラヴァ・トゥリシェフとその同僚たちが、宇宙生物学のまったく新しいアプローチとして、アインシュタインの相対性理論を用いて太陽系外地球型惑星の詳細な観察を行うという独創的ミッションに取り組んでいる。
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同ミッションは、巨大な物体が光と空間と時間を曲げるというアインシュタインの相対性理論に基づき、太陽の巨大な重力を太陽重力レンズ(SGL)として使い、太陽系外地球型惑星の可視光および赤外線の波長を拡大しようとしている。

そのアイデアには、太陽帆船(ソーラー・セイル宇宙船)の船団を、650AU(AUは天文単位、地球と太陽の距離)、すなわち準惑星である冥王星の16倍遠くまで飛ばす計画が含まれている可能性がある。目的位置に達したら、厳密な調整の後、宇宙船は太陽の重力レンズを用いて、太陽系から100光年以内にある太陽系外地球型惑星を観測する。

計画では、そのSGL観測所は惑星の質量、軌道、大気および地表地形を、わずか15~25kmの解像度で描写できるという。その惑星が生命を有しているかどうかも高い確度で調べられる。
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宇宙船の最終的な構造は現在開発中だが、プロジェクトはすでに200万ドル(約2億680万円)の資金を、予備研究のためにNASAの革新的先進概念(NIAC)プログラムの一環として受け取っている。現在、チームは非営利団体Solar Gravitational Lens Foundation(太陽重力レンズ財団)の6月設立に向けて、プロジェクトの公営化を進めている。

ミッションにとって最初のハードルは、どうやってそこへ到達するかだ。トゥリシェフは、そのような観測用宇宙探査機は2030年代後半には打ち上げが可能であり、太陽帆とイオン推進を使用して25年以内に目的位置に到着できると述べている。

コンセプトのNIACフェーズIIIは2022年9月に成功裏に完了したと、新設されたSGL財団の執行役員となったトゥリシェフは述べている。SGLは人類が太陽系外惑星の表面を直接観測して生命の存在を確認する唯一の方法だと彼はいう。



メートル級の光学望遠鏡とそこそこのコロナグラフ(実質的に日食を模倣する光学機器)を650AU以遠のSGL目標領域で使用することで、太陽系外惑星の生命の兆候を検出できる。これには、季節変動の観察、地表地形の画像化、大気スペクトルの取得および気象のモデル化も含まれる。対象物が近いほど、高解像度の画像を短期間に取得できる。

太陽は木星や土星の重力的影響によって少々揺れているため、同ミッションはイオンエンジンを定期的に使用して太陽の移動にあわせて微調整する。

そのような自然のレンズを使って、遠方の太陽系外惑星から受け取った光は、太陽の重力レンズによって分解されたように見える。背後にある恒星や太陽系外惑星の重力レンズ効果により、太陽の周囲に光の輪が作られ、これを「アインシュタインリング」と呼ぶ。望遠鏡を650AU以上移動することで、太陽自身の円盤とアインシュタインリングとの間隔が大きくなっていることを天文学者は保証できる。
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翻訳=高橋信夫

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