「蚊の棲み家を特定するために、ヘビやワニなどの危険な生き物がいる場所に、人間を送り込まなければならないかもしれないんです」と、ルーカスはフォーブスの取材に語った。
今月初めの規則の改訂前に、彼女が所属する蚊の管理局は8機の蚊の撃退用ドローンを保有していた。そのうち、5機は中国のDJI製で、もう1機は米国のSkydioが中国で製造したものだ。残りの2機はまだ使用可能だが、ルーカスによれば、DJI製のものには性能が劣るという。
4月5日以降、フロリダ州の政府機関は中国、イラン、北朝鮮、ベネズエラなどを含む「懸念国」で製造されたドローンを使用することが禁止された。
このドローンをめぐる規則改訂は、TikTokの禁止を検討し、中国のハイテク企業を締め出そうとする米国議会の動きの一環だ。DJIの場合は、国防総省や内務省を含む複数の連邦政府機関が、すでに機関内で使用を禁止している。そして今回、デサンティス知事率いるフロリダ州が、州としては初めて禁止措置を導入した。
今回の規制を実施する州の管理サービス局(DMS)の広報担当者のダン・バローは、中国製ドローンがフロリダ州に「重大なセキュリティリスクをもたらす」とフォーブスに宛てたEメールで述べた。この規則によって、消防署や警察などの複数の機関が、対応を迫られることになった。
現地メディアによると、州内の公共機関は近年、DJIのドローンに推定2億ドル(約270億円)を投じていたという。
規制に反発する声も
ドローンの専門家によれば「懸念国」のものではない代替の機種は入手可能だが、一般的にそれらはコストが高く、性能も低いという。マイアミ・デイド消防救助隊長のルイス・バレリーノはフォーブスに「5年前に押し戻されたような気分だ」と語った。彼らは、DJI製ドローンに代わる新しいドローンを手に入れたが、性能が大きく劣るという。例えば、代替機には衝突回避ソフトウェアが搭載されていないため、建物内で飛行させることが不可能だという。
一方で、マイアミ・デイド警察はこれまで約14万ドルを投じて購入した16機のドローンを使用できなくなったと述べている。
ワシントンD.C.においても、同様の禁止令を支持する声が上がっており、2月には2人の議員が連邦政府による中国製ドローンの新規購入を禁止する法案を提出した。
ボストンを拠点とするドローン関連のコンサルタントのフェイン・グリーンウッドは、フロリダ州は今「一律的なアプローチが新たな課題を生み出す」という困難に直面しているとフォーブスの取材に述べた。
「このような規則を連邦政府レベルで一律に導入するのは本当にひどいことです。蚊を研究する人と、国家のセキュリティを担当する人が、同じルールで縛られるなんて理解し難いことです。中国人は、フロリダの人里離れた場所で行われる、蚊の駆除に興味があるのでしょうか?」と彼女は話した。
(forbes.com 原文)