銀の価格は、ここ1カ月で約20%急騰して1オンスあたり約25ドルをつけ、同期間のS&P500の上げ幅の約5%を大きく上回っている。さらに金(9%)やプラチナ(10%)、パラジウム(12%)などの他の貴金属の上昇率を大きく超えている。
貴金属の価格の高騰の背景には、外国通貨に対するドルの価値が、ここ1カ月で約2%、昨年9月の20年ぶりの高値からは9%以上下落したことが挙げられる。
投資顧問大手deVere GroupのCEOのナイジェル・グリーンによると、銀の需要の約半分は工業製品向けで、ドル安は一般的に工業製品に追い風を与えるという。「なぜなら、工業製品はドルで取引されるため、ドルが下落すると、米国以外の地域の購入者にとって安くなるからだ」と彼は説明した。
マクシミリアン・レイトン率いるシティのアナリストも最近のメモで「貴金属、特に銀は、現在進行中の強気市場にとってほぼ完璧な条件を備えている」と述べ、今後数カ月のうちに価格がさらに18%上昇して1オンスあたり30ドルに達する可能性があると予測した。
同チームは、金利の不透明感が年内は続くため、ドルの下落の余地が大きく、銀の価格が今後の6~12カ月で1オンスあたり34ドルに急騰することもあり得ると指摘した。
景気の先行き不安は、過去にも貴金属の価格を大きく押し上げたが、その後は急落していた。銀の価格は2008年の金融危機後の3年間で約400%上昇したが、その後の4年間で約70%暴落した。
ドルの価格は、昨年春の米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げの開始を受けて上昇し、主要通貨バスケットに対するドルの強さを示すドル指数は10月まで20%上昇した。しかし、その後は不透明感の高まりの中で下落している。
「欧州の成長率の伸びや米国の景気後退の可能性、中国の景気回復といったすべての要素がドル相場を圧迫している」とdeVere Groupのグリーンは説明し、先月は銀行危機がさらにドル相場を圧迫したと指摘した。「この状況は、ドルを2023年の最大の敗者の1つに導くための完璧な嵐と言える」と彼は述べた。
しかし、貴金属相場に対して誰もが強気な訳ではない。シュローダー社の投資主任のヨハンナ・キルクランドは、先日のレポートで、成長が減速しインフレ圧力の緩和が進む中で、ここ最近の貴金属相場の上昇が、一時的な下落に取って代わられる可能性があると指摘した。彼女は、購入を決定する前に「より良いレベルを待ったほうが良さそうだ」と述べている。
(forbes.com 原文)