宇宙スタートアップ「オービット・ファブ(Orbit Fab)」は、まだ使用可能な衛星が燃料切れによって廃棄されるのを防ぐため、軌道上で燃料補給を行う給油基地のネットワーク構築を目指している。米国防総省(ペンタゴン)の支援を受ける同社は、衛星メーカーが使用する給油ポートのオープン規格を立ち上げた。
コロラド州に本拠を置くオービット・ファブは4月17日、8090 Industriesが主導するシリーズAラウンドで予定額を上回る2850万ドル(約38億円)を調達し、累計調達額が3160万ドルに達したことを明らかにした。このラウンドでの評価額は明らかになっていない。
スペースXによってロケットの再利用が普及しつつある中、オービット・ファブのCEOであるダニエル・フェイバー(Daniel Faber)にとって、人工衛星の寿命を延ばすことは自然な流れだったという。「今や、再利用可能なロケットを持っていなければ淘汰される。人工衛星業界も再利用を見据えており、数年後には、燃料補給が可能な衛星を持っていなければ淘汰されるようになるだろう」とフェイバーは話す。
衛星用の燃料補給インフラを構築することは、口でいうほど簡単ではない。宇宙産業アナリストのクリス・キルティ(Chris Quilty)は、燃料補給のインフラがないのに、メーカーに燃料補給の機能開発に投資してもらうのは困難であり、また逆も然りだと指摘する。「これは典型的な『にわとりが先か、卵が先か』の問題だ」と彼はいう。
その一方で、経済的なインセンティブは非常に大きい。通信ネットワークを支える大型の静止衛星は数億〜数十億ドルもし、打ち上げ費用だけでも数千万ドルを要する。衛星は地球や太陽、月の重力によって軌道がわずかに狂うため、正確な位置を維持するために燃料が必要となる。現在、オービット・ファブは衛星にヒドラジン100kgを補給する費用を2000万ドルに設定している。燃料補給により、衛星はより長く軌道を維持し、使用年数を延ばすことができる。
フェイバーによると、宇宙で燃料を補給することのもう1つの利点は、同じ量の燃料を積んで打ち上げるよりも安く済むことだという。つまり、今後は燃料タンクを満タンにして打ち上げる必要がなくなるため、衛星を軌道に乗せるための投資額を削減できる。「削減した投資額を運用費用に回せるようになれば、ゲームが大きく変わる」と彼は指摘する。