22年1月には、泡盛かすからDHA藻類を安定的に発酵させることに成功。泡盛かすを、DHAとうま味を多く含む食用藻「Umamo」へとアップサイクルする技術が完成した。同社は23年1月に、この製造技術で特許を取得している。「泡盛で育てたUmamoは多くのうま味成分が含まれていておいしい。このおいしさは、運がよかったとしか言いようがない」
「魚を減らさない海」への挑戦
現在、AlgaleXはUmamoを使った商品の第1弾として、一般市場向けにうま味や成分を生かしただしじょうゆや調味料、サプリメントなどを展開している。だが、高田が目指すのは海のサステナビリティの向上だ。そのためには、Umamoを魚の養殖の飼料として活用してもらえるように、製造原価を下げる努力が欠かせないと高田は指摘する。「養殖魚の餌となる魚粉のキロ単価は現時点で過去最高値の350円程度まで高騰しており、今後も下がる見込みはありません。30年までにはUmamoの単価を魚粉の卸売価格を越えるレベルまで下げ、飼料マーケットでUmamoを活用してもらい、魚に魚を食べさせない持続可能な養殖を目指します」
商社で原料調達の経験などを培ってきた、高田らしい算段だ。一方、一般消費者向けの食品商材については、年内にも海外市場に進出することをもくろんでいる。さらに、他企業と協業し、植物性の原料でつくる「代替魚」の風味の鍵としてUmamoを使うプロジェクトも走り出した。「Umamoは完全植物性なので、ビーガンやハラルなどのマーケットでのニーズも見込むことができると考えています」
高田が願うのは、「当たり前に魚を食べ続けられる未来」。沖縄という土地がもっていた特性と自社の技術。さまざまな偶然が組み合わさって開発された藻が、世界中の魚を救う日はそう遠くないかもしれない。
高田大地◎AlgaleX代表取締役社長。1989年生まれ。茅ヶ崎市出身。早稲田大学法学部卒。在学中に休学し、カナダの高級ホテルに勤務。卒業後、大手総合商社にてM&A、事業再生、ベンチャー投資を担当した後、水産養殖の課題解決を目指し、商社在職時に投資したスタートアップにCFOとして転職。2021年3月、沖縄県うるま市にAlgaleX設立。