他の小売企業のヘルスケアに関する取り組み
多くの小売企業がWalmart Healthと並んでプライマリーケア市場でシェアを競っていますが、その一部を以下に紹介します。・Amazonは2023年2月にプライマリーヘルスケア企業であるOne Medicalの39億ドルでの買収を完了しました。Amazonは、オンライン薬局や遠隔診療の提供など、数年前からヘルスケア分野に進出しています。今回の買収は、同社がより広くヘルスケアサービスを提供するという長期的な計画を強化する上での大きなステップです。
・家電量販店のBest Buyは最近、非営利の病院ネットワークシステムであるAtrium Healthと提携するなど、ヘルスケア分野における様々な拡大を行っています。両社は共同で、病院レベルのケアを自宅で直接提供する新しいサービスを開始する予定です。また、特別な訓練を受けたBest BuyのGeek Squadのスタッフが自宅へ訪問し、機器の設置や、患者や介護者が機器を使用するためのトレーニングを行います。
・上記の提携は、Best Buyが2021年11月に買収した、遠隔医療モニタリング、テレヘルス、患者エンゲージメントを医療機関向けの単一ソリューションに統合した英国のケアアットホーム技術プラットフォームであるCurrent Health社に続くものであり、Atriumとの提携は、これらの新しいテレヘルス機能を最大限に活用することになると思われます。
・ドラッグストアのCVS Healthは、高齢者向けプライマリケアセンターのネットワークであるOak Street Healthを106億ドルで買収している最中です。この買収により、同社はOak Street Healthのクリニックと患者基盤を、CVSが提供する薬局および薬局関連商品と組み合わせることを目指します。CVS Healthによると、Oak Street Healthの買収は、低価格でのケア提供の展開幅を広げ、長期的な成長を加速させることにもなるとしています。
・2022年9月、CVS Healthは、高度な分析、テクノロジー、全米の医療提供者ネットワークを活用し、低価格での支払いプログラムを構築し強化するヘルスケアプラットフォームであるSignify Healthを買収しました。この垂直統合により、CVS HealthはSignify Healthのデジタル機能を活用し、患者・医療従事者の体験向上を目指します。
・2022年11月、Walgreensのプライマリーヘルスケア部門であるVillageMDは、プライマリーケア、専門医療、緊急医療の主要プロバイダーであるSummit Health-CityMDを90億ドルで買収することに合意しました。この買収で、VillageMDとSummit Healthは合計で、米国とVillageMDの26市場において680以上のプロバイダー拠点を持つことになり、高品質で安価なケアを提供するマルチペイヤープラットフォームを構築します。
・Walgreensは、Care Centrixの買収を加速し、2023年3月末までに完了する予定です。Care Centrixは、急性期医療後および在宅医療における業界リーダーであり、ケアの調整および給付管理のアウトソーシングサービスを提供しています。今回の買収により、Walgreensは成長著しい在宅ケア分野への進出を拡大し、ヘルスケア分野における長期的な成長目標に向けての前進を目指します。
WHAT WE THINK
米国では安価な医療提供と医師不足が深刻化している中、Walmart Healthの新センターは、安価で新しいプライマリケアサービスを提供することを目指しています。Walmart Healthの新しいセンターは、従来の医療機関としてだけでなく、患者が薬局にいるときやWalmartの店内で買い物をしているときにも接点を持てるようになることを意味します。Walmartがもつ展開規模は、幅広い人々にリーチし、ヘルスケア市場に多額の投資を行っている他の小売企業との競争にも有利に働くものと思われます。Walmartは、ヘルスケア分野を戦略的成長機会と捉え、その規模、専門知識、テクノロジーを活用することで、同市場における主要プレイヤーになることを目指しています。米国では高齢化が進み、医療費の高騰が続いているため、安価な医療サービスに対する需要が高まっており、こうした流れを大きく取り込もうとしています。同社はヘルスケア事業に進出することで、中核となる小売事業への依存度を下げ、新たな収益の柱を作ろうとしています。
※この記事は、2023年4月にリリースされたRxR Innovation Initiativeからの転載です。
