アートを「目的」とせず「媒体」と考えると、何が起こるか?

LOGS代表取締役社長 武田悠太

アパレルのOEM/ODMを中心とした事業を展開するLOGS(ログズ)の代表を務めながら、アートギャラリー「PARCEL」、10代のためのクリエイティブ教室「GAKU」のファウンダーでもある武田悠太。今年2月には、アートフェア「EASTEAST_TOKYO 2023」を開催し、約1万人来場という成功を収めた。

経営者である武田には、日本のアート業界、昨今のトレンドである「経済×文化」はどのように映るのか。事業の成長も見据えながら、アート領域で今後注力していく領域とは。

アート領域を専門とする編集者・コンサルタントである深井厚志が聞いた(後編)。
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「クリエイティブ&コミュニティ」が新たな流通を生む

深井:「EASTEAST_」のステイトメントの中で、「市場経済と文化・アートが公平に作用し合う『文化的エコシステム』の創造を目指す」と謳われています。「文化×経済」というのは、この3〜4年、ビジネスサイドでも国家レベルでも非常に注目されているタームだと思うのですが、武田さんが文化と経済を繋げようと考えるモチベーションはどこにあるんですか?

武田:問屋を含む、アパレル業界の流通の現況が大きく関係しています。供給よりも需要のほうが大きかった戦後の時代には、「そうは問屋が卸さんぞ」という言葉が表す通り、問屋が卸す場所を決めていた。

やがて生産力がつき、需給のバランスが逆転したとき、第二次流通革命でセレクトショップが、続いて製造と小売を直接結ぶ「SPA」という流通モデルが登場しました。が、昨今は、コロナ禍よりも前にアメリカのバーニーズ・ニューヨークが経営破綻し、パリのセレクトショップ「コレット」が閉店、FOREVER21が日本から撤退する(2023年2月に再上陸)など、流通の一時代が終焉を迎えました。

その背景には、インターネットやSNSの普及により小売店を持つ必要性がなくなったことと、グローバル企業の台頭があります。彼らは、仕入れから流通、ブランディング、デザイン、クオリティに至るまで、すべてが一流。例えばユニクロのプロダクトって、僕らが真似したくても絶対につくれないほどクオリティが高いんです。今のままでは、もはや流通では差別化を図れず、プロダクトで真っ向から勝負をしなければならない。

その潮流に立ち向かうべく、LOGSでは「クリエイティブ&コミュニティ」を指針に掲げ、クリエイティブとコミュニティがマッチするときに生まれる新しい流通を取りにいくという方向にシフトチェンジしました。もっと言えば、それが、今社会に必要な流通の形だと思っています。文化も流通も、中間層の底上げをすべきなんです。
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インタビュー=深井厚志 文=菊地七海 撮影=杉能信介 編集=鈴木奈央

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