イランの人権状況に関する国連特別報告者のジャバイド・レーマン教授や宗教および信仰の自由に関する特別報告者ナジラ・ガネア教授をはじめとする国連の専門家は14日、このほど同国政府が発表したヒジャブ法の抑圧的な施行により、同法を遵守しない女性に対する制限や懲罰が強化されることになると警告した。
昨年9月、クルド系のマフサ・アミニ(22)が「道徳警察」に服装規定違反の疑いで逮捕された後に死亡して以降、多くの女性の生活体験が下降線をたどっている。アミニの死によって、イラン全土に抗議活動が広がった。首都テヘランのほか、イーラーム、ケルマンシャー、マハバード、サナンダジ、サーリー、タブリーズをはじめ、国内の複数の都市で数千人が街頭に出て、アミニの死に対する説明責任や女性に対する暴力や差別の撤廃、ヒジャブ着用義務の廃止を訴えた。こうした平和的な抗議活動に対して武力が過剰に行使され、サリナ・エスマイリザデ(16)、ニカ・シャカラミ(16)、ハディス・ナジャフィ(23)など、複数の女性が抗議活動中に犠牲となった。
イランでは刑法をはじめとする法典に、ヒジャブ着用を義務づける条文がある。中でもイランのイスラム刑法では、公序良俗に対して「侮辱的」だと判断された行為は、10日~2カ月間の懲役または74回のむち打ち刑に処されることになっている。そのため、ヒジャブを着用せず公共の場に姿を現した女性は、10日~2カ月の間、刑務所に入れられる可能性があるのだ。この法律は、同国で女子の刑事責任年齢の下限とされている9歳の女児にも適用される。だが実際には、小学校入学時の7歳から女子はヒジャブの着用を強制されていると、国連の専門家は指摘する。ヒジャブ着用を強制する今回の措置は、イランの女性に対する迫害に拍車をかける一方だ。
新措置は、監視カメラを使って服装規定を守らない女性を特定し、処罰することを可能にするもの。また、新措置により、治安当局や行政当局が女性を独断による逮捕や拘束の対象とし、病院や学校、政府機関、空港を含む公共機関への立ち入りを拒否することができるようになる。
国連の専門家は、このような抑圧的で厳格な措置は、ジェンダーに基づく迫害の政策表明であり、イラン人女性の権利を容認できない水準まで侵害することにつながると指摘。ヒジャブ着用の拒否を犯罪と見なすことは、女性の表現の自由に対する権利を侵害し、政治的、市民的、文化的、経済的な権利に対する他のあらゆる侵害にも道を開くことになると訴えた。さらにイラン当局に対し、憲法を改正し、既存のジェンダー差別的な法律を無効にし、女性の服装や行動を国家当局が公私にわたって監視・管理するような規制をすべて撤廃するよう要請した。
イランがヒジャブを着用していない女性を厳重に取り締まる新たな方法を採用する中、国際社会は黙っていてはいけない。人権擁護団体は、イランにおける女性の迫害をジェンダーアパルトヘイト(性別隔離)として認識するよう国際社会に求めている。
(forbes.com 原文)