米企業の間では採用難やインフレにともなう賃金の高騰から、低コストの国に仕事を移す動きが加速している。アトランタ連銀の最近の報告書によると、米国内でのリモートワークに続く次の段階として、仕事のオフショアを増やす方針だと答えた企業幹部は全体の7.3%にのぼった。
「自宅から仕事ができる人は恐れたほうがいい」。テレワークでできる仕事のオフショアビリティー(海外移転の可能性)についての研究があるジュネーブ国際開発研究大学院のリチャード・ボールドウィン教授は昨年、英経済政策研究センター(CEPR)でそう警鐘を鳴らしている。「インドやどこかに、その仕事をずっと安い金額でやる人がいるからだ」
職場をめぐる問題の専門家であるスタンフォード大学のニコラス・ブルーム教授も「ソフトウエア開発者や人事担当者、給与管理者など、米国のサービス支援職の10〜20%ほどが今後10年で海外に移転する可能性がある」とウォール・ストリート・ジャーナルに語っている。
米国の仕事3000万件が「外注予備軍」
業務のアウトソーシング(外部委託)はコスト削減や利益率向上の方策として全米の企業の間で広まっている。求人情報サイトのジッピア(Zippia)のリポートによると、米国では毎年約30万件の仕事が外注されており、66%の企業は少なくとも1つの部署を外部に委託している。また、アウトソースの対象になりやすい仕事は約3000万件を数えるという。米国をはじめとする高度に工業化した国にとって、途上国へのオフショアリングには業務コストを抑えられたり、税制上の優遇措置を受けられたり、原材料を安価に入手できたりするメリットがある。
最もアウトソーシングが進んでいる業界や企業の部署はIT(情報通信)だ。企業のIT予算の平均13.6%がオフショア向けとなっており、IT関連業務の約37%がアウトソースされている。オフショアされやすい職種の上位にもプログラマーやデータ入力者などのIT職が入っている。