気候変動に生物多様性、分断化された世界。従来の近視眼的な発想では、もはや地球規模の課題に立ち向かうことはできない。そんななか、国や業界の枠組みを超えて、多様なアントレプレナーシップを発揮しながら「よりよい未来」に挑む人たちがいる。
AIと3Dプリンティングを用いた義足開発に世界で初めて成功したインスタリムCEOの徳島泰。自らを「僧侶/アンセストリスト」と称し、2023年の「ダボス会議」では世界のリーダー層を長期思考に誘い注目を集めた松本紹圭。米バークリー音楽院の音楽療法科と音楽制作・デザイン科を首席で卒業し、音楽を軸に新たな社会貢献のあり方を模索するマルチアーティストの鶴田さくら。異なるナラティブをもつライジングスターの座談は、それぞれが描く「希望」のシェアから始まった。
徳島泰(以下、徳島):私はインドに住みながら、途上国を中心に安価で良質な義足を提供する仕事をしています。活動を通じて日々、貧困状態の人たちがいかにアンフェアネスな状態に置かれているかを実感しています。
日本では、義足は比較的安価で手に入りますが、途上国の人たちはそもそも義足を買える環境にない。糖尿病や交通事故などで脚を切断した場合、肉体労働の仕事しか選べない地域では、義足がないと職を失います。人生も家族も社会も、すべてに対してあきらめざるをえない人たちが大勢いる。こうしたアンフェアネスがなくなることが、私にとって手触り感のある、よりよい社会です。
松本紹圭(以下、松本):私は20年間僧侶をしてきましたが、ずっと「声」に注目してきました。僧侶の仕事は読経や法話など声を使う仕事であると同時に、見えない人たちの声に耳を澄ませることでもあります。
企業経営者や従業員と対話する産業僧や、対話中の声を「観音テック」で解析して組織エンゲージメントとの関係性を分析する取り組みもしていますが、働く人たちには本来もっている声を出しきれていない人が多いと感じます。皆がそれぞれの声を出し合い、互いを響かせ合うポリフォニックな世界になってほしいと思いながら活動しています。