アジア

2023.05.04

「世界で最も幸せな国」ブータンと仮想通貨の謎めいた関係

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世界で最も孤立した国の1つであるブータンは、農業と林業を主な経済基盤とし、仮想通貨への投資を連想させる国とは言い難い。しかし「世界で最も幸せな国」と呼ばれるこの国は、ビットコインやイーサなどのデジタル資産に何百万ドルもの資金を密かに投資していたことが明らかになった。

フォーブスが確認した裁判書類によると、約29億ドル(約3900億円)の資産を運用するブータンの政府系ファンドは、破綻した仮想通貨貸し付けサービスのブロックファイ(BlockFi)やセルシウス(Celsius)の顧客だった。

ブータンの政府系ファンド「ドゥルック・ホールディング・アンド・インベストメンツ(DHI)」は、地元のチーズメーカーや水力発電所、ロイヤルブータン航空などの資産を管理している。2007年に国王の勅許により設立されたDHIは、ブータン国民の長期的な利益を保護することを目的としている。

しかし、DHIは少なくとも2022年以降に密かに仮想通貨分野に投資を行っていたことが、明らかになった。DHIの投資が、7歳の皇太子が最初のユーザーとなった生体認証のデジタルIDプラットフォームなどの、ブータンにおける最近の取り組みと関連しているかどうかは不明だ。しかし、この投資は、謎めいたこの国と仮想通貨との関係について疑問を投げかけるものと言える。

昨年11月に破産を申請したブロックファイの弁護士は先に、DHIが3000万ドルの債務の一部を不履行にしているとして訴状を送達した。

ブロックファイによると、DHIは2022年2月に3000万ドルの相当のUSDコイン(USDC)を同社から借りたという。しかし、DHIは、残りの債務の82万ドルを未払いにし、全額を返済することを拒否したという。

DHIのCEOのウジュワル・ディープ・ダハルは、フォーブスに対し「ブロックファイとの問題は解決済みで、守秘義務があるためコメントできない」と回答した。彼は、DHIが3000万ドル相当のUSDCを必要とした理由や「解決済み」が融資の返済を意味するのかなどの質問には答えていない。
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編集=上田裕資

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