アジア

2023.05.04

「世界で最も幸せな国」ブータンと仮想通貨の謎めいた関係

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さらに、DHIは、同じく昨年7月に破産申請を行ったセルシウスに複数の口座を持ち、2022年4月から6月にかけて、ビットコインやイーサ、テザーなどの仮想通貨の入出金やレンディングなどの取引を行っていた。セルシウスの提出書類によると、DHIはデジタル資産で6500万ドル以上を引き出し、1800万ドル近くを預け入れていた。

セルシウスの弁護士は、破産後の90日以内に移転された資金の「クローバック」を求める意向を示しており、DHIに対して法的措置がとられる可能性がある。

政府系ファンドによる仮想通貨投資

しかし、ここで気になるのは政府系ファンドであるDHIが、仮想通貨に数千万ドルを投資することが非常に奇妙な動きであることだ。政府系ファンドが、仮想通貨に直接投資を行うのは、おそらく世界で初めての事例と思われる。

中国、ネパール、インドに挟まれたブータンは、観光による経済成長を目指し、1974年に初めて外国人に国境を開放した。パンデミックの影響で外国人の観光が一時的に禁止される以前は、水力発電や農業と並んで、観光はブータンの最も収益性の高い事業の1つだった。ブータンはまた、仮想通貨分野にも同様の機会を見出していたことが示唆されている。

DHIは2020年に、ブロックチェーン関連のカンファレンスを主催し「この分野の産業を誘致する可能性がある」と述べていた。その1年後に、仮想通貨の国際送金サービスを手がけるリップルは、ブータンの中央銀行とCBDC(中央銀行デジタル通貨)を動かす試験運用を始めると発表した。また、その直後にブータンはNFTアートの実験を開始し、ブロックチェーン上で炭素クレジットを発行した。

フォーブスはDHIとリップルの両社に、デジタル通貨の試験プログラムが継続中かどうかを尋ねたが、回答は得られていない。一方、ブータンが炭素クレジットプラットフォームの開発を依頼したシンガポールのテクノロジー企業InfraBlocks Technologiesは、このプロジェクトが「今年後半に商業的に開始される」と述べている。

InfraBlocksの共同創業者でプレジデントのShubhomoy Rayは「我々はパイロットプログラムを完了し、水力発電プロジェクトの取引のためのマーケットプレイスを構築した」と述べている。

forbes.com 原文

編集=上田裕資

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