経済

2023.04.24 08:00

自動運転への投資に急ブレーキ、前年比60%のマイナスに

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自動運転分野への投資が急減したことが、米国や欧州を拠点とするベンチャーキャピタルのF-Prime Capitalの新たなレポートで明かされた。2021年の自動運転分野への投資額は過去最高の97億ドルを記録したが、2022年の投資額は前年比58%減の41億ドル(約5490億円)に落ち込んだという。

さらに過去5年間で世界全体で900億ドルに達したロボティクス分野への投資も減少し、2021年の180億ドルから2022年には120億ドルに減少したとされる。

一方で、ここ最近投資額を伸ばしているのが、物流やヘルスケア、防衛、製造、建設など特定の産業向けに作られたバーティカル・ロボティクス(vertical robotics)の領域だ。

「2022年の投資の急激な後退にともない、AV(自律走行車)テクノロジーは特に影響を受け、投資家はこれらの企業の多くについて商業化への道筋に疑問を持ち始めている」とF-Prime Capitalの新たなレポートは述べている。「この分野でよりエキサイティングなトレンドの1つはバーティカル・ロボティクスの成長であり、このセクターは2022年に再び成長することが期待されている」

グーグルのWaymo(ウェイモ)はスタッフを解雇し、自動運転テクノロジーのAurora(オーロラ)は現金の温存を検討し、フォードとVWのArgo AI(アルゴAI)は閉鎖され、他の複数の自動運転のスタートアップも他社との合併や、人員削減を模索している。

しかし、バーティカル・ロボティクス分野への投資は、2018年の22億ドルから昨年は約70億ドルに急増した。

この分野の主要企業には、物流分野ではZipline、医療やヘルスケア分野ではCMR Surgical、防衛分野ではOculusの創業者パルマー・ラッキーが立ち上げたAnduril Industries(アンドゥリル・インダストリーズ)、製造分野ではBright Machines、建設・鉱山分野ではBuilt Roboticsなどが挙げられる。

さらに、イスラエルのInnovizやAutoStore、Preceptなどのバーティカル・ロボティクス分野の上場企業の時価総額は150億ドルに達し、この分野では過去5年間で約200億ドルのM&Aが行われた。

ただし、自動運転分野への追加投資は減少しているが、この分野にイノベーションが起きていない訳ではない。テスラやGMの先進運転システムの「スーパークルーズ」など、既存のプレイヤーは革新を続けており、ドライバーと車両の操作に関するデータの収集を進めている。

さらに、物流や農業、建設、鉱業などの分野のバーティカル・ロボティクスの企業は、ナビゲーションや障害物の回避などの課題に直面しており、この分野への投資の一部が、自動運転分野に流れ込むことが期待されている。

forbes.com 原文

編集=上田裕資

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