すべてをAIに任せるのは危険
当初、メイヨークリニックのデータは同院の患者の記録に限定されていたが、昨年7月にメイヨークリニック・プラットフォームは全米25大ヘルスシステムの1つであるマーシー(Mercy)と提携し、そのリーチを拡大した。マーシーは5億人分の非特定化された患者データを保有している上、メイヨークリニックとは患者の母集団や地理的な位置が異なる。このことから、両者のデータを組み合わせることで精度の向上やモデルの偏りの低減を図り、患者に対してより多様で効果的な治療推奨が提供可能になることが期待される。「我々は、これを分散型データネットワークと呼んでおり、世界中の医療機関を結び付けて、プライバシーが保護されたモデルの開発と検証を複数の機関で行うことを可能にした。従来のようにデータをサイロに閉じ込めていた状況に比べてより良い方向に進化している」とハラムカは話す。
ハラムカが医学博士号を取得したのは30年前のことだ。「当時から多くのことが変わった。医学部で学んだことの50%は間違っているが、どの50%かわからない」と彼はいう。これは恐らく真実であり、最近学位を取得した医師にとってはより当てはまるかもしれない。
「AIは、データベースとマルチモーダルな患者データを分析し『これら5つの診断を検討したらどうか?』といった提案をしてくれる」とハラムカはいう。しかし、彼はジェネレーティブAIに熱狂する人々が、意思決定を完全に統計モデルに委ねることは危険だと警鐘を鳴らす。
「AIは『 artificial intelligence(人工知能)』の略ではなく、『augmented intelligence(拡張された知性)』を意味すると私は考えている」と彼は語った。
(forbes.com 原文)