ほぼ肉レベルの代替肉と米の再生。「美味しさ」が廃棄を減らす

大豆由来の代替肉サンプル(不二製油)。その食感は「すでにもう肉」と言っていい。

大豆由来の代替肉サンプル(不二製油)。その食感は「すでにもう肉」と言っていい。

英語圏には「Waste not, want not.」という格言がある。資源を無駄にしないことで、将来的な不足や困難に対処できる、という考え方を指す言葉だ。

日本語では「もったいない」という世界の共通語も思い浮かぶが、「食であれば、お米一粒にも神様がいるという自然の恵みに感謝する意味が近い」とFOODLOSSBANKの山田早輝子は言う。

「お米の中の神様とは、日本人が昔から持っていた無駄にしない精神です。それが現在、農林水産省によれば毎年522万トンもの食糧廃棄が行われています」

山田は、食品ロスの現状に対し、生産者と企業やブランドをつなぎ、商流に乗らなかった素材を生かして商品化するなど幅広くこの問題について取り組んでおり、廃棄素材へ新たな付加価値をつけることに尽力している。

日本では食糧廃棄物は一部飼料として活用されるが、全世界でその廃棄量は年間25億トンにも及ぶという試算もある。食糧廃棄は埋立てにより発生するメタンや焼却などで、世界のGHG(温室効果ガス)排出量の8〜10%*がこれに起因すると見られている。これは1国家レベルの排出量に匹敵する。(*IPCC 第6次報告書より)

山田早輝子◎食の廃棄の問題を解決すべく、コロナ禍の2020年にFOODLOSSBANKを創業。日本ガストロノミー学会代表。18年の 海外生活で培った人脈を生かし食品ロスの解決に奔走。

山田早輝子◎食の廃棄の問題を解決すべく、コロナ禍の2020年にFOODLOSSBANKを創業。日本ガストロノミー学会代表。18年間の海外生活で培った人脈を生かし食品ロスの解決に奔走。


「GHGの問題では、飛行機に乗る飛び恥というコトバが生まれましたが、バイオ燃料などの取り組みも進みリアルさに欠けています。それよりも『ロス恥』でしょうね。IPCCのレポートによれば、食品ロスは飛行機の6倍近くもGHGが多い。野菜はよく知られるように安定供給と見た目の大事さという慣例から過剰に生産せざるを得なく、価格を維持するために多くが調整=廃棄されるが、これにもエネルギーが費やされる。お米にもムダがあって、毎年新米が取れるのでそれ以外は古米とみなされます」

すでに日本のコメの状況はいびつな状況で、2021年の水稲作付面積は10年前から28万ヘクタール減り、代わりに加工用、飼料用米は4倍近くに増えた。また、輸出米2万2000トンに対し輸入米は76万トンにも及ぶ。(*農水省令和5年米をめぐる状況より)

山田は伊藤忠食糧とともに、「れすきゅうまい米」という試みを行っている。飼料や廃棄となる古米、精米段階で欠けたりした形の悪いコメなどを、さまざまな製品に転化する取り組みだ。米粉への加工などで菓子など別の商品に生まれ変わる。

「日本の米・古米、米粉を活用することで、日本の農家さんも販路が増やせるし古米を捨てる量を減らせます。イタリアのリゾットに使うお米など、わざわざ海外から輸入しなくても多様な種類の日本米で代用も可能です。日常的に使われるお米、小麦粉の代わりにれすきゅう米やその米粉を活用することで、食糧廃棄から脱却する一つの方法になります。すでに全日空さん社内食堂やキッザニアさんのプロジェクト、お菓子のコラボでは東京で評価の高いレストランとして知られるétéでも、れすきゅう米粉は活用いただいていて、理解と活用が進んでいます」

レスキュー米をはじめ、伊藤忠食糧が米の保存と精製を行う倉庫を見学する山田ら。

レスキュー米をはじめ、伊藤忠食糧が米の保存と精製を行う倉庫を見学する山田ら。

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文=Forbes JAPAN 編集部 写真=西川節子(人物)

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