北米

2023.05.01 11:30

知らないうちに犯罪組織に加担? メキシコ産アボカドの裏側

木村拓哉
「競合する利害関係が多すぎて、州が犯罪者を規制・処罰する力を失ってしまった。その結果、州と犯罪者が癒着したネットワークが幾つも対立しながらモザイクを描いている。州の権力は分断されてしまった。もはや犯罪者を抑え込む力はない」。

エルンストは続ける。「平和的手段を使う代わりに、交渉の言葉を暴力にエスカレートさせる。紛争を拡大させる大きな要因であり、犯罪集団が足場を固めるにつれて紛争は悪化の一途をたどっている」。

米団体世界正義プロジェクト(WJP)は2022年、「法の支配」の強さを示す指数でメキシコを世界で下から5位にランク付けし、シエラレオネやフィリピンより状況は悪いとの判定を下した。メキシコの地方部では汚職が依然として大きなリスクとなっている。

メキシコ政府は汚職・犯罪対策に苦戦している。ロペスオブラドール大統領は物議を醸すポピュリストで、その治安戦略についてエルンストは悲観的だ。ロペスオブラドールの対組織犯罪治安政策にエルンストはD評価をつけた。メキシコ軍が組織犯罪集団の解体を助けるどころか、犯罪者と結託しているケースがあまりにも多いとみている。

「これらの(組織犯罪)集団は時間の経過とともに、受け身な現(ロペスオブラドール)政権下で地域の経済や政治にどんどん深く食い込みやすくなっている」とエルンストは説明した。

特に、アボカド生産への組織犯罪の関与には十分な証拠がある。また、ライム、グレープフルーツ、鉱物、ベリー類の生産・輸出にも犯罪組織が関与しているという。「アボカドに限った話ではない。膨大なリストだ。(組織犯罪の)ポートフォリオには、合法的な経済活動による生産物が数十種類は含まれている」。

メキシコの合法的なビジネスにおける組織犯罪の関与は、メキシコでの投資プロジェクトの可能性についてデューデリジェンスを行う外国企業の経営陣が理解すべき政治的リスクである。「こうした犯罪組織が果樹園に資金を流し、起業家として地域の有力者になる傾向もある」という。

米国は2022年にメキシコから31億ドル(約4150億円)相当のアボカドを輸入した。Whole Foods(ホールフーズ)、Stop & Shop(ストップ&ショップ)、Costco(コストコ)、Sam’s Club(サムズクラブ)などで販売され、多くの消費者が組織犯罪集団と関係のあるメキシコ企業からアボカドを購入している可能性がある。

エルンストは、メキシコ産アボカドの不買運動に警戒しつつ、消費者が紛争と無関係のアボカドを買えるよう保証する方法をアボカド業界は考案しなければならないと考えている。「認証制度を設けて輸入業者や生産者にインセンティブを与え、より良い保護を提供するのは一案だ。よりクリーンなアボカドにより良い対価を支払う仕組みを作れる」とエルンストは語った。

forbes.com 原文

編集=荻原藤緒

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