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2023.04.26

富士通がAIと行動経済学を融合した「デジタルリハーサル技術」を開発

プレスリリースより

現実空間から収集したモノや環境などのデータを、AIの分析・処理を経て仮想空間で再現するデジタルツイン。当初、活用の場は製造業や建設業が中心だったが、コロナ禍を経て医療や小売、金融など、幅広い業界へと波及している。

そんな中、富士通はデジタルツイン上に人々の行動を高精度に再現することで、人々の行動の変化を予測し、施策の効果や影響を事前に検証できる「デジタルリハーサル技術」を開発。4月1日からイギリスでシェアードモビリティ事業を展開するBeryl社協力のもと、同国ワイト島でシェアードeスクーターサービスの運用を改善する施策の導出を目指して、実証実験を開始したことを発表した。

デジタルリハーサル技術とは、AIによるビッグデータ分析と行動経済学の知見を融合し、状況に応じて変化する人々の行動を高精度に再現することで、人々の行動変化を予測。施策の効果や影響を、事前に検証可能にするものだ。

行動経済学のプロスペクト理論では、人は理論上の最適な行動を取るのではなく、期待に基づいてバイアスのかかった行動を取ることが分かっている。例えば人は事象が発生する確率の高低を過小評価する一方で、損失を過大評価し、回避する傾向がある。

富士通は、こうした非合理的な行動特性に加え、天候などの間接的な要因が個人の選択に及ぼす影響の特徴をAIに学習させ、人の行動選択モデルを開発。このモデルをデジタルツインと融合させ、例えばイベントで周辺交通機関を利用する人の動線や、交通状況に応じた人の行動の変化に伴う影響を、人の心理も踏まえたうえで高精度に事前検証できるようにした。

実証実験では、島内の特定エリア間を移動した人数や時間帯などの人流データ、eスクーターの移動データを用いて行動選択モデルを生成し、デジタルリハーサル技術を用いた実証システムを構築した。島の人々が移動する時間帯や場所、ルートなどを予測しつつ、eスクーター運用改善施策の効果を検証。

例えば島内におけるeスクーターの配備場所や数の変更、特定の場所への返却で使用料を割引くなどといった施策が、利用者の利便性を向上させ、運用コストやCO2排出量の削減に寄与しているかをシミュレートする。富士通はそれによって、ワイト島の環境、社会、経済性の観点を踏まえた、総合的に効果の高いシェアードeスクーターサービス提供方法の導出を目指す。

同実証実験は、富士通がリード・テクニカル・パートナーとして参画中のイギリス政府によるプログラム「National Digital Twin Programme」で、同国ビジネス・通商省と協力して実施している取り組みの一部。今後、今回のデジタルツインを拡張し、ワイト島すべての交通手段を反映できるようにし、将来の交通手段の決定に役立てることが検討されているという。

富士通は今後、実証実験で得られた知見をもとに、モビリティサービス事業者のサステナビリティ・トランスフォーメーションを支援するほか、今回のような人文社会科学とデジタル技術を融合するコンバージングテクノロジーの取り組みを通じて、サスティナブルな社会の実現を目指していく。

プレスリリース

文=大柏 真佑実

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