2023.04.21 14:00

自転車の死亡事故が急増する米国、SUVとの衝突は致命傷に

Getty Images

自転車に乗る人が車と衝突した場合、一般的な乗用車よりもSUVのほうが危険で、深刻なケガにつながりやすい。平均すると、SUVとの衝突のほうが、体の外傷全般の重症度スコアは55%、頭部外傷の重症度スコアは63%高かった。

頭部外傷の原因として多い「地面との衝突による負傷」は、SUVとの事故では、乗用車の2倍にのぼる頻度で起きている。

これらの知見は、米国道路安全保険協会(IIHS)が4月13日に公開した新たな研究により得られたものだ。

同研究論文の筆頭著者で、IIHSの統計学者であるサム・モンフォートは声明で「SUVは、事故の被害者をクルマのボンネットの上に乗り上げさせるのではなく、むしろ自転車から叩き落とす傾向があり、その結果として、倒れた人をさらに轢くこともある」と述べている。「これはおそらく、(乗用車よりも)高さのあるSUVのフロントエンドが、自転車に乗る人の重心より上にぶつかるせいだろう」

同研究によれば、米国では過去10年に自転車の衝突死亡事故が大幅に増えているが、その原因は、SUVのフロントエンドが高いことに加えて、SUVが急増していることが考えられるという。

この最新研究の知見は、自転車に乗る人にとっては、大型車の方が小型乗用車よりも危険であることを示した別の研究の結果とも一致している。

2020年には、米国の道路上で自転車乗車中に交通事故により死亡した人は932人で、低水準だった2010年の621人から増加している。近年では、歩行者でも自転車でも、死亡事故が増えている。新たに公開された連邦政府の死亡事故データによれば、2021年には、車の搭乗者以外の交通事故死者数が8600人を超え、2020年から11%増加したという。

過去のIIHSの研究では、歩行者がSUVと衝突した場合の事故は、(SUVは、他のクルマと比べて危険が小さくなるように設計が変更されたが、それにもかかわらず)乗用車と比べて死亡が多いことが明らかになっている。今回の自転車に関する研究と同様に、歩行者の事故でも、SUVのフロントエンドの高さによるリスクが原因として挙げられている。さらに、歩行者とSUVの衝突事故では、下腹部や胸部への直接の衝撃が、乗用車よりも危険であることが、過去の研究で示されている。

今回の研究では、ミシガン州で起きた自転車の交通事故71件のデータを詳しく検証した。警察の報告書、医療記録、事故の再現などの情報を分析したものだ。

全体として見ると、SUVまたは乗用車と衝突した71件の事故すべてにおいて、下肢の外傷が一般的だった。極めて深刻な事故では頭部の外傷が多く見られたが、それは胴部、腹部、脊椎、四肢などの別の外傷とともに生じていた。

だが、自転車に乗っていた人の衝突後の動きを分析したところ「クルマのボンネットにのりあげたことによる負傷」が乗用車との事故に限られていた一方で「衝突後に轢かれたことによる負傷」は、SUVとの事故に限られていた。

別の分析では、乗用車との事故では、クルマの前部と上部の部品(ルーフ、フロントガラス上部のレール、フロントガラスそのもの)の飛散が負傷の原因になるケースが多いのに対して、SUVとの事故の場合、車輪や車体下部による負傷、もしくは地面に叩きつけられたことによる負傷が多かった。

SUVは、自転車に乗っている人と衝突した場合、その人を激しく地面に叩きつける。そして、ドライバーがクルマを止めようとしている間に、自転車から落ちた人を轢くこともあると研究者らは結論づけている。轢かれなかった場合でも、SUVとの衝突では、地面に叩きつけられて負傷につながるケースが、乗用車との衝突よりもはるかに多いという。

forbes.com 原文

翻訳=梅田智世/ガリレオ

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