ビジネス

2023.04.28 13:00

八重洲・日本橋・京橋 YNKエリアの「まちの活躍する人」6名に迫る

「文具で世界をより幸せに」戦前から続く業界に挑む

NEXT switch 文具営業専門家 寺西廣記

NEXT switch 文具営業専門家 寺西廣記


学生時代にWindows95が発売され、「デジタルの時代が来る」と都市ガス会社の情報システム部門に就職。寺西は順調にキャリアを重ねるが、母の病気をきっかけに、筆記用具メーカーである実家の寺西化学工業に入社した。営業として手腕を振るうが、生産から小売店までルートが確立され、閉塞感漂う文具業界に疑問を覚えた。

「もっとできることはないか」と、F1カーのタイヤに書くペンへの提案など枠にとらわれない仕事を続け、結果的に父から「やりたいようにやるといい」と背中を押され起業した。2014年、38歳のときだった。

ベンチャー文具メーカーの営業支援事業に邁進する矢先、コロナ禍が襲う。文具の生産は縮小し小売店は激減。その危機を救ったアイデアが「文具のサブスク」だ。

幅広い知見と人脈を活かしてこだわりの文具を厳選し、箱詰め・発送まで自ら行った。20~30個と想定した初月の注文数はなんと130個。メディアに取り上げられ、2カ月後には400個もの注文が入る。世の中は予想以上に文具の温かみと面白さを求めていた。

現在の拠点は京橋のシェアオフィスにある。そこは文具業界の老舗企業モリイチのビル「。名刺に『モリイチビル』とあるだけで、大きなインパクト。今後は海外にも文具の魅力を広めたい」と野心を燃やす。

てらにし・ひろき◎「マジックインキ」などの製造・販売で知られる寺西化学工業創業者を祖父にもつ。文具道師範代として、こだわりの文具を詰めた「文具のサブスク」をスタート。

書店を「受け身のビジネス」から文化の発信地へ

丸善ジュンク堂書店経営企画部部長 工藤淳也

丸善ジュンク堂書店経営企画部部長 工藤淳也


工藤淳也の仕事における原点は、現在の丸善&ジュンク堂ネットストアの立ち上げの経験にある。ネットストアで購入した本を店舗で受け取れるようにしたところ、引き取りに書店に訪れる人が、その場でまた新しい本を購入していった。その姿を見た工藤は、「リアルな書店はまだまだ人々に求められている」と実感した。

現在は、SNSなどでつながっている同じ趣味・嗜好の人たちがリアルに絆を深める場として、書店を活用する方法を模索している。「オンラインとオフラインをつなぐ」試みは、コロナ禍で書店発信のオンラインイベントなどを生んだ。

近年は新たな取り組みとして麻雀のプロリーグ「Mリーグ」とスポンサー契約し、グッズ製作も手がけ、唯一の公式グッズショップ「M.LEAGUE OFFICIAL SHOP 東京」を日本橋にオープン。売り上げの2割は麻雀関連のマンガや書籍だという。

「丸善がギャンブルのイメージが強い麻雀を扱うことに議論もありました。ですが丸善は、実は創業以来書籍にとどまらず文化を発信し続けてきた企業。いわば原点回帰として、ここから新たな文化を生み出したい」

“受け身”のビジネスから、コンテンツの魅力をより主体的に提案していく書店へ。工藤の挑戦は続く。

くどう・じゅんや◎ジュンク堂創業者・工藤恭孝を父にもつ。2016年より丸善ジュンク堂書店で経営企画部部長とシステム部部長を兼務。

text by Nanae Ito / photographs by Toru Hiraiwa / edit by Masako Kihara

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