経済

2023.04.20

ロシアの石油を「ロンダリング」する5カ国から日本などへ石油製品の輸出増加

Alexander Chizhenok / Shutterstock.com

フィンランドの研究機関「エネルギー・クリーンエア研究センター(CREA)」が4月18日に発表した報告書によると、ウクライナ侵攻をきっかけに5カ国がロシアから原油の輸入を増やし、ロシア産石油に制裁措置を取っている国々に販売する製品向けにその原油を精製しているという。

そうした国々の「ロンダリング」の動きはロシア産石油製品の価格上限の効果を弱め、侵略の資金を提供しているとアナリストは指摘している。

「製品の原産地が変更されているため、これは現在のところロシアの石油に制裁を科している国々に石油製品を輸出する合法的な方法だ」と報告書にはある。「この手法はプーチンに戦争資金を提供する」とも指摘している。

ウクライナ侵攻後にロシアからの石油輸入を増やした「ロンダリング国」として、CREAは中国、インド、アラブ首長国連邦、トルコ、シンガポールを挙げている。また、これらの国々は欧州連合(EU)、オーストラリア、日本、英国、カナダ、米国など制裁としてロシアの石油製品に「上限価格を設けた国」への精製品の輸出も増やした。

「EU、G7(主要7カ国)、オーストラリアはロシアの石油を石油精製品というかたちで第三国から輸入し続け、自国の船舶や保険を使っての輸送を認めている」と、エネルギーアナリストで報告書の共著者であるアイザック・レヴィは述べている。

CREAによると、EUはこれらの精製品を最も多く輸入しており、オーストラリアがそれに続いている。ロンダリングされた製品のほとんどは欧州の船で運ばれている。

ロシアのウクライナ侵攻の翌年、ロンダリングしている5カ国は海上輸送によるロシア産原油の輸入を前年比で140%増やしたとCREAは指摘する。この5カ国がロシアの原油輸出の70%を占めている。

一方、5カ国から上限価格を設けた国々への石油製品の輸出は26%増加した。上限価格を設けていない国々への輸出は2%増にとどまっており、ロシア産石油の大半が最終的に上限導入国に流れていることがわかる。

「ロシア産原油の主要輸入国から石油製品の輸入を増やすことは、ロシアに対する石油制裁の効果を弱める」と主席アナリストで報告書の共著者のラウリ・ミルヴィルタは話す。「一方、この貿易を取り締まることは、大いに必要とされているさらなる影響力を行使し、ロシアのウクライナへの残忍な侵略の資金を断つ機会だ」とも指摘する。

ロシアの石油はディーゼル、ジェット燃料、ガスオイルとして上限価格を設けた国々に流入している。

CREAによると、EUはウクライナ侵攻後の12カ月間に、ロシア産石油が使用された製品に193億ドル(約2兆5925億円)を費やした。次いで額が大きいのはオーストラリアで87億4000万ドル(約1兆1740億円)だ。以下、米国が72億1000万ドル(約9685億円)、英国が54億6000万ドル(約7335億円)、日本が52億4000万ドル(約7038億円)となっている。

CREAはフィンランドに本部を置き、欧州とアジアにスタッフを抱える独立した研究機関。これまでに、ドイツのロシア産天然ガスへの依存や、ロシアからの資源供給が減少しても生活できるようになった欧州の驚くべき二酸化炭素排出量の減少について報告書を発表している。

forbes.com 原文

翻訳=溝口慈子

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