ラウンドは香港一の富豪である李嘉誠の非公開ベンチャーキャピタル(VC)、ホライゾンズ・ベンチャーズ(維港投資)が主導し、オーストラリア有数のVCであるブラックバード・ベンチャーズも参加した。このほか米中央情報局(CIA)のVC部門「In-Q-Tel(インキューテル)」、米ライフエックス・ベンチャーズ、豪レーダー・ベンチャーズなども出資した。
コーティカルは研究者から起業家に転じたホン・ウェンチョン最高経営責任者(CEO)が2019年に創業し、メルボルンに本社を置く。ヒト幹細胞由来の脳細胞を微小電極アレイ上で培養してつくったディッシュブレインは、目標志向のタスクをこなす能力を持つとうたわれている。
コーティカルは昨年、ディッシュブレインがアタリのピンポンゲーム「ポン」の遊び方を習得できたことを明らかにしている。ディッシュブレインをコンピューターに接続し、電気信号を送って画面上のボールの位置やパドルからの距離を伝えると、ディッシュブレインは自分でパドルの動かし方を判断するようになった。電気信号によるフィードバックを重ねるにつれて腕前は上達していったという。
ホンは19日の発表文で「AIと合成生物学の組み合わせには無限の可能性が広がっており、より強力で持続可能なデジタルAIの実現性も高まっていく」と述べ、「当社のテクノロジーがAIの次のフロンティアを形づくり、けん引していくだろう」と強調している。
ChatGPTなどのデジタルAIより優位に
コーティカルは、産業界で同社の生体チップを最初に採用するのは製薬会社になりそうだとの見通しを示している。新薬などの検査での活用が見込まれるという。ただ、意識を生み出すこともできるのかなど、倫理面での懸念がもち上がる可能性もある。テクノロジー業界では、米OpenAI(オープンAI)の「ChatGPT」(チャットGPT)の登場を機に、大手各社がAIチャットボット投入を急いでいる。コーティカルのディッシュブレインは、チャットGPTのようなデジタルAI技術に比べて要するエネルギーが少なく、成長や適応、学習のペースは速いため、最終的には優位に立つものとされる。
ホンはコーティカルの起業に先立ち、医療テック企業のCliniCloud(クリニクラウド)を共同で設立した。クリニクラウドは中国のテック大手テンセントや中国平安保険のVC部門から出資を受けている。
(forbes.com 原文)