スタートアップで起きがちな「メンタル不調」 誰がケアをすべきか

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他にも精神的負担が大きくかかる時期もありましたが、私は幸運なことにいずれも大事には至りませんでした。しかし周囲には、ある日会社に来れなくなった友人、回復に数年を要した友人などがいます。

メンタルヘルス不調の主な要因には、仕事量や質(裁量)、周囲との人間関係といった要素があります。それだけではなく結果への責任感が強すぎて過労傾向にある人、周囲に相談できず1人で抱え込んで頑張りすぎてしまう人は不調に陥りやすいです。
 
最近ではコロナ禍による外出の減少やコミュニケーション不足などからも不調が引き起こされています。

スタートアップでできる3つのメンタルヘルスケア

では、スタートアップではどのような対策ができるのか。取り組むべきケアは3つあると考えています。
 
1. 経営者自身がメンタルヘルス不調を当たり前と捉えて接する(意思決定権を持つ管理職によるケア)
 
先に紹介した調査では、経営者自身が精神的支柱としてストレス耐性を持つべきだと回答した人が87%、従業員に高いストレス耐性を求めている人も65%いることがわかりました。
 
また、経営陣の8割が「自分たちに相談してほしい」と考える一方、従業員は半数が上司への相談を避けているそうです。その理由の一位は「解決しそうにない」というものです。
 
つまり、従業員がメンタルヘルス不調を相談しづらい空気を作っているのは、経営者自身である可能性があるということです。
 
メンタルヘルス不調はいまや30人に1人が抱える疾病でもあり、経営者が「メンタルヘルス不調は異常なことではない」と意識を変える必要があります。
 
リンケージでは経営陣全員がメンタルヘルスに関する一定の知識を持ち、メンバーの不調の予兆に気づいたら声がけを行ったり相談時間を設けるようにしています。
 
また、経営者自身のケアも重要です。労働時間に定めがない役員は過労傾向にあり、常に企業の存続や成長プレッシャーにさらされています。経営陣同士で、あるいはメンターに、抱え込まずに共有や相談ができると良いでしょう。
 
2. 一人ひとりのリテラシー向上(セルフケア)
 
会社全体のヘルスリテラシーを高めることも大切です。スタートアップ企業には若く仕事熱心な従業員が多いですが、ストレス耐性は人によって異なりますし、どんなにタフな人でも限界を超えれば調子を崩してしまいます。一人ひとりが自らの健康を守ることで、結果として組織の生産性を上げる意識が大切です。
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文=夏目萌 編集=露原直人

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