この法案は、児童の性的虐待コンテンツ(CSAM)などの有害コンテンツを規制するために提案され、約2年間をかけて議会で審議が進められてきたものだ。
しかし、この法案で特に議論を呼んでいるのが、利用者のプライベートなメッセージに有害コンテンツが含まれていないかどうかの監視を、アプリの運営元に義務付け、違反した場合は巨額の罰金を科すというものだ。このような監視を可能にするテクノロジーの導入は、暗号化チャットアプリのセキュリティを弱める可能性がある。
アップルは以前、既知のCSAMデータベースに登録されている画像ハッシュを用いて、iMessageの有害コンテンツを監視すると述べていた。しかし、この検出システムは不完全なものであることが判明し、多くの関係者の批判を浴びた結果、この計画を延期していた。
「この法案は、エンド・ツー・エンドの暗号化を破り、人々の個人的なメッセージを無差別に監視する道を開くことになる。誰もが安全にコミュニケーションする能力が、根本的に損なわれることになる」とWhatsAppやSignalの幹部らが署名した書簡には書かれている。
この法案はまた、アプリのセキュリティを弱め、犯罪者や人々を監視しようとする国を有利にする危険もある。さらに、この書簡で指摘されたように、国連でさえ、この法案がこのまま実施された場合に「悲惨な結果を招く可能性がある」と警告している。
Signalはすでに、暗号化を弱めることを強いられた場合は、英国から撤退すると宣言し、社長のメレディス・ウィテカーはBBCに「人々の信頼を損なうようなことは、絶対に100%しない」と語っていた。
さらに、Elementのような新興のチャットアプリも反対の声を上げている。「この法案は、一般の人々に影響を与えるだけでなく、英国のスタートアップや大手のテック企業に対抗しようとする企業にも打撃を与えることになる。法案で義務付けられる監視は、小規模なスタートアップにとっては負担が大きすぎる」と、同社の創業者のマシュー・ホジソンは述べている。
さらに、英国コンピュータ協会(BCS)は、この法案が「多くの犯罪者が歓迎するものになりかねない」と指摘し、適切だと考える同協会の会員がわずか14%しかいないと述べている。
この法案は、来年施行される見通しとされている。
(forbes.com 原文)