子宮頸がんワクチンわが娘には? 副反応は? 医師に聞いた

心療内科医、産業医 内田さやか氏

予防接種しないことによる「デメリット」は?

最大のデメリットは、子宮頸がんを発症すること、そして場合によっては子どもを産めなくなることです。子宮頸がんおよびその治療においては、「がん」にかかるということだけでなく、「女性にとって大切な臓器のひとつである子宮を失うこと」「子供を産めないこと」「流産のリスクが高まること」など、心身への負担、人生への影響が大きいと言えます。

子宮頸がん自体は、早期に発見されれば予後の悪いがんではありませんが、妊孕性(子どもを産める機能)を失う手術や放射線治療を要する20代・30代の方が、年間約1000人います。また、前がん病変に対する円錐切除術の件数は年間1.3万件を超えています。円錐切除術後は、流早産のリスクが高まると言われています。 

20歳になったら検診も。推奨されるのは「2年に1回」

HPVワクチンは、先述の通り、子宮頸がんに対する大変有効な予防策となります。しかし、100%予防ができるわけではないため、早期発見に有効な「定期的な子宮頸がん検診」もセットで実施してほしいと思います。

日本でも「20歳以上の女性は2年に1回の検診」が推奨されています。なお、ほとんどの市町村では、がん検診の費用の多くを公費助成していますので、無料または一部の自己負担で検診を受けることができます。また、健康診断の際にオプションで追加するのも1つの方法です。健保によっては補助が出る場合もありますので、ご確認ください。

産業医として──「男性社員」の高い関心に驚きも

私は産業医をしているので、職場の健康管理を担う立場なのですが、日本の定期健康診断は、「働くことで健康を害していないか?」の確認が一番の目的ですので、そもそも予防医療や健康寿命の延伸などを目的に設計されてきたわけではありません。また、女性特有の健康課題にはだいぶマッチしていません。そのため、女性社員は自分で注意しておく必要があるのですが、その情報提供や注意喚起として、企業内でHPVワクチンや子宮頚がん検診のお話を取り上げるようにしています。

検診に関しては、先にもお伝えしたように、市区町村のがん検診や、健保の検診オプションを利用することができますが、それでも補助されない分の金額は、会社が補助するか?といった検討もしています。

また、ここで面白いのは、HPVワクチンについてのお話をすると、よく聞いてくださるのは、中高生の娘さんをお持ちのお父様たちだということ。自分のことには無頓着だったり、喫煙したりしていても、娘のこととなると興味津々かつ心配になるというわけです。確かに、健康とは自分よりも、大切な人のそれの方が気になる、というものかもしれません。

ワクチン接種について親子で話す必要性

いくらHPVワクチンが有効だとしても、親として知識を持ち接種してほしいと思っても、接種するのは、学校6年~高校1年相当の女子本人です。説明すれば、HPVワクチンがどんなものなのか、それをどう思うか、この年齢であればある程度、自分で考えることもできると思います。まずは親子で話す機会を持ち、両親が娘さん自身の「健康の自己決定」をサポートしてあげられると良いと思います。

また、HPVワクチンをきっかけに、生理やPMSへのケア、婦人科の存在、性の安全などを家族や身近な大人と話せるといいのではと思います。その際に、大人がある程度ヘルスリテラシーをもっていることは必要不可欠です。皆さんがヘルスリテラシーを持って、ご自身やご家族の人生の選択肢を広げていけることを願っています。

参考文献
厚労省:https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou28/index.html
みんハピ:https://minpapi.jp/


内田 さやか◎ビジョンデザインルーム代表、SAHANA Retreat Spa & Clinic https://www.vdr.co.jp/clinic.html 院長。心療内科医、産業医、労働衛生コンサルタント、公認心理師。温泉ソムリエでもある。

文=内田さやか 編集=石井節子

ForbesBrandVoice

人気記事