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2023.04.24

日米ベンチャー時価総額に10倍以上の格差、必要なのはマインド改革

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岸田内閣は2022年、「スタートアップ育成5カ年計画」を発表し、「新しい資本主義」の考え方を体現するものとしてスタートアップの支援に乗り出しましたが、現在の日本のスタートアップにはどれほどの存在感があるのでしょうか。日本のスタートアップの経営支援をしてきたベンチャーとスタートアップ転職の専門エージェント、キープレイヤーズが調査を行ったところ、日米でのスタートアップに思いのほか大きな格差があることがわかりました。

キープレイヤーズは、日本のベンチャー企業のプレゼンスを知るために、東京証券取引所に上場している3879社を対象に、以下の条件を満たす企業がどれだけあるかを調べました。

・年末時点で時価総額が1000億円を超える年が3年続いた
・1998年3月25日以降にIPOした
・設立が1990年以降
・2023年4月時点で800億円以上の時価総額がある
・エネルギー、不動産、公共セクター。銀行は除く
・そのほか、有識者と相談のうえ、ベンチャーに該当しないと判断した企業は除く

その結果、SHIFT、クラス、ネクステージ、Freeeなど29社あることがわかりました。また「1998年以降に上場した時価総額800億円以上の企業」だけでみると175社ありました。

比較のために、アメリカの証券取引市場の場合をみてみると、時価総額の条件を800億ドル(約10兆7450億円)に引き上げても、該当する企業が195社と日本を上回りました(ほかの条件は上記と同じ)。

アメリカと日本の経済規模に大きな差があることは、誰もがわかっていることです。それにしても、テスラやスペースXなど、新興企業が基幹産業の古参企業をどんどん追い抜く様子を見るにつけ、単に経済規模だけの話ではないようです。

キープレイヤーズの代表取締役、高野秀敏氏は、会社の設立年の条件を緩めると企業数が増えるのは、時価総額が大きい企業に占める古い会社の割合が大きいからだと分析しています。また、新興企業に投資家の資金が流れていないとも話しています。その理由として高野氏は、日本の環境が古いビジネスにおってまだ有利であること(新参者は入りづらい)、海外で起きている「古い会社からベンチャーが市場シェアを取る」ようなイノベーティブな事例が限られていることの2つをあげています。スタートアップが成長するための環境整備が必要だと同氏は話します。

政府の5カ年計画には、スタートアップ投資への税制優遇などのほかに、若者を海外で学ばせる仕組みなども盛り込まれています。これは、冒険を恐れて起業を躊躇する日本人のマインドの変革という、非常に根本的で大きな課題への挑戦となります。日本全体を活性化させるためには、子どものころからの教育も見直す必要がありそうです。

プレスリリース

文 = 金井哲夫

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