「平和主義」がプーチンの逆鱗に?
ゼレンスキーは元来、軍事にあまり関心がなかった。「軍部関係者は、『大統領は統治の最初の数年間、自分たちを大いに信頼し、行動の自由を与えてくれた』と話す」とシュスターは言う。野党は、そんな飄々としたゼレンスキーを批判する。EUのゴンチャレンコも「2月24日以前に何があったのか、どのように、どのような方法で2月24日に至ったのか、多くの疑問が残る」という。
ゼレンスキーの平和主義は逆説的にプーチンの逆鱗に触れてしまったと、歴史家のプロヒイは述べる。ゼレンスキーが平和を望んでいることは、ウクライナ国内のみならず、世界的に周知されていた。
だがロシア侵攻によって、ゼレンスキーは戦争に関心を抱かざるをえなくなった。「ゼレンスキーは即座に発想を転換した」とアラハミヤ最高会議議員は言う。「侵攻後、最初の2カ月は戦争以外の議題はまったく議論されなかった」。
2月24日の夕方に軍服に身を包んで以来、ゼレンスキーの私服姿は目撃されていない。
特に計画されたわけではない、とアラハミアは言う。「24日の朝はみな、私服でバンコバ地区の地下壕に来た。だが陣地壕まで降りて行くと、スーツ姿の人はあまりいなかった。M-TACの倉庫に行き、軍服をたくさん買った。みんな、便利だからと軍服を気に入った。ただ1つ問題があった。大統領と同じでない軍服を選ぶのは大変だったのだ」。
バフムートに関する戦略に批判も
2023年初頭、ウクライナの戦略は海外メディアから批判され始めた。その決定はしばしば政治的な目標によって追求されると主張されている。たとえば、2月13日、ワシントン・ポストのジャーナリストはある米国高官の言葉を引用して、「ゼレンスキーは、ウクライナ人の士気に打撃を与えることを恐れるあまり、戦況が激しくなっているバフムートから手を引こうとしない」と記している。今回、取材に応じた別のある人物は「この決定で限られた資源の多くが無駄になる。バフムートの保護と反撃を同時に行うことは非現実的である」と話した。
「まず第一に、現実の世界では軍事的な決定と政治的な決定が完全に切り離されることはない」。リターンアライブ財団の上級軍事アナリスト、ミコラ・ベレスコフは言う。「第二に、もし我々が現在、戦況が激しくなっているバフムートから離れたとしても、ロシアは資源がある限り前進を止めないだろう」。
なお今回、フォーブス ウクライナが取材した誰一人として、ゼレンスキーと軍最高司令部の対立は認めていない。「法執行機関の指導者が週に数回集まって話し合いをしている事実は、対立があるのではという見方に対する答えだ」とイェルマクも言う。ゼレンスキーの側近も、ゼレンスキーが24日に署名した「軍に対する責任の強化に関する法律」を挙げ、次のように述べた。「軍部が必要とすれば、たとえ政治的な不評が自身に集まろうと、ゼレンスキーは応えようとするだろう」。
(ウクライナ語から英語への下訳にDeepL無料版を使用し、編集部で翻訳・編集した)