エルダグセンの作品は、ワールド・フォトグラフィー・オーガニゼーション(WPO)が主催する「ソニー・ワールド・フォトグラフィー・アワード(SWPA)」一般公募部門の「クリエイティブ」カテゴリーで1位に入賞。賞品として、ソニー製カメラ一式などが進呈されるはずだった。だが、エルダグセンは公式ウェブサイトに出した公開書簡で、受賞を辞退する意向を示した。
エルダグセンは「権威ある国際『フォトグラフィー』コンテストでAI生成画像が受賞したのは初めてであり、これは歴史的な瞬間だ」としつつも「AI画像とフォトグラフィーは、このような賞で競い合うべきではない。AIはフォトグラフィーではない」との理由で、受賞を辞退すると表明した。(編集者注:エルダグセンは、AI生成画像を「フォトグラフィー」ではなく「プロンプトグラフィー=PROMPTOGRAPHY」と呼ぶよう提案している)
受賞作品は、1940年代の撮影テクニックを再現して2人の女性を描いたもの。SWPAのウェブサイトからはすでに取り下げられている。
主催団体のWPOは声明で、この作品がAIとの「共作」であることはエルダグセンに確認を取っていたと説明。「クリエイティブ」カテゴリーはさまざまな実験的アプローチを受け入れるものであり、エルダグセンの作品は応募資格を満たすと判断したと述べている。受賞発表後も、このトピックについての議論を深めたいというエルダグセンの意向に沿い、作者とのQ&Aをウェブサイト上に掲載する準備を進めていたという。
だがWPOは、エルダグセンが受賞を辞退したことを受け、その出場資格を撤回。エルダグセンのコメントからは「私たちを意図的に欺こうとした」ことが示されていると批判した。
エルダグセンの作品は、AI画像生成ツールを使い「過去の偽の記憶」を作り出すもので、制作手法は本人の公式ウェブサイトで説明されている。
テキストのプロンプト(指示文)のみに基づいて写真を生成する無料AIツールの人気は、ここ半年で大幅に拡大。DALL-EやStable Diffusion(ステーブル・ディフージョン)、MidJourney(ミッドジャーニー)といったウェブサイトを使うことで、誰もが実写のような偽画像を瞬時に作成できるようになった一方で、法律面や倫理面での問題も生んでいる。
例えば先月には、カトリック教会のフランシスコ教皇が白いダウンのコートを着た写真が拡散したが、これはMidJourneyを使って生成された画像だった。また、ドナルド・トランプ前米大統領は最近、自身がひざまずいて祈る姿を描いたAI生成画像をSNS上で共有した。
トランプの逮捕シーンを描いたフェイク画像も複数出回った。ポルノ女優に支払った口止め料をめぐり起訴されたトランプは今月、ニューヨークの当局に出頭し、裁判所で罪状認否を行ったが、一連のフェイク画像はそれより前に反トランプ派が作成したものだった。
MidJourneyは最近、利用者数の急増を受け、無料トライアルの停止を発表している。現在のAI生成画像には、人の手にある指の数が多すぎるなど、偽物であることを見分けるヒントとなるものが含まれることも多いが、こうしたツールが今後、性能を向上させていくことは間違いない。
(forbes.com 原文)