ビジネス

2023.04.21

西條 晋一×手嶋 浩己 長期的な成長を遂げる骨太な企業を生み出したい

スタートアップは20代だけのものではない。ITとビジネスの実務経験を身に付けた30~50代の「オトナ起業家」による新しい革命がYNKエリアで始まっている。この流れを牽引するVCの旗手・西條晋一と手嶋浩己が目指す、日本のベンチャーの未来とは。


ともに大企業出身である西條晋一と手嶋浩己が、ベンチャーキャピタル・XTechVenturesを立ち上げたのは2018年のことだった。設立前、米国や欧州と比べて日本に30~40代の起業が少ないことに課題意識と自社の競争戦略を見出したXTechVenturesでは、「オトナ起業家」の支援を強く意識しながら投資実績を積み重ねてきた。1号ファンドは投資件数39件、累計投資額約39億円、EXIT件数7件という実績を残しクローズ。2号ファンドは約130億円の資金を募り組成を完了している。西條晋一は言う。

「2010年ごろの日本のネット業界では、起業する人たちのほとんどが20代。一方、同時期の米国のデータを見ると30代後半から40代が中心になりつつあった。30~40代の起業家は経験や実績が豊富だ。ナスダック上場はもちろん、シリアルアントレプレナーとして成功している起業家も多く、日本でもその年齢層による起業を促したいという思いがあった」

時は流れ日本のスタートアップエコシステムも成熟し始める。ふたりが描いた目標に現実が追いついてきた。それまで、30代以上の起業のハードルを高めていたのは、「資金調達の難しさだった」(西條)。例えば、家族や子どもの生活を背負いながら、「給料なし」「会社に寝泊まり」などハードな環境での挑戦は無謀と同義だ。ただ現在では、前職と比べてそれほど遜色ない条件で起業できる資金調達環境が整ってきており、結果「30~40代、なかには50代で起業する人も増えてきた」と西條は言う。

20代がリスクを取り、成功事例が増え、VCに流入するマネーも増える。そして成功例を目の当たりにした人たちが精神的に刺激を受け、かつ整った資金調達環境に飛び込む。手嶋己はこのような変化を「エコシステム発展の自然な流れ」と分析している。

「起業環境が良くなったことに加え、インターネットビジネスを10年以上経験した層の絶対数が増えていくことで、相対的に30〜50代でも起業する人が増ラスサイクルに日本のエコシステムも到達した。この流れは一過性ではなくさらに加速していくだろう」(手嶋)

日本のエコシステムの成熟を肌で感じてきたふたりは、経験豊かなベンチャーキャピタリストとして新たな目標を掲げている。それは「長期的な成長を遂げながらグローバル市場で戦える骨太な企業を生み出す」というものだ。



「時間をかけてアセットを蓄積していくビジネスは崩れにくい。お金儲けはもちろん大事だが、私たちは投資した会社の将来にもこだわりたい。業界内では『自分たちは儲かったがその後は散々』というケースが多々ある。それは仕事の結果としてはとても虚しいことだ。ファンド出資者にリターンをもたらしたり、IPOを輩出するのは当たり前。自分たちにとって重要なのはその先のフェーズだ」(手嶋)
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text by Ha Hungi / photographs by toru Hiraiwa / edit by Masako Kihara

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