世に“名品”と称される品は、時代や国境を超えて人々に愛され続ける、ある種の普遍性を備えているものだ。その一方で膨大な品々が日々現れては消えているわけだが、果たしてその差はどこで生じるのだろうか。これまで世界中の紳士に愛される数々の傑作シューズを生み出し、新たな名品の呼び声も高いニューモデル「ロレンツォ ドライブ」をこの春夏世に問うベルルッティ。その靴が名品たるゆえんを探ってみたい。

靴の産地であるイタリア中部マルケ州出身のアレッサンドロ・ベルルッティにより、1895年フランスはパリにて創業されたベルルッティ。長らく高級ビスポークシューズ(注文靴)を手がけていたが、1959年に初めて既成靴を導入。さらなる変革をもたらしたのが、4代目当主オルガ・ベルルッティだ。彼女は文化人との幅広い人脈を築き、ポップアートの巨匠アンディ・ウォーホルのためにモダンなローファーをデザイン。のちに「アンディ」と名付けられて代表的アイコンモデルとなり、クラシックだけにとらわれないアーティスティックなブランドスタイルの礎となった。
そして1980-1990年代にかけて、顧客の好みに合わせてカラフルな色付けができる驚くべき独自革「ヴェネチアレザー」および手塗り技法「パティーヌ」を開発。黒と茶のみの紳士靴に鮮やかな革命を起こし、世界的ブランドへと駆け上がったのである。

こうした120年以上に及ぶ歴史を通し、数々の名靴を生み出してきたベルルッティだが、その背景には“顧客の要望に応える”という、ビスポーク仕込みの理念が垣間見える。顧客は何を求めているのか。あるいはどんなアイテムが最も顧客らしいのか。ブランドとしての主張性や流行の先導者足らんとする気負いとは一線を画す、そうした顧客のためのピュアな創造性こそが、時代を超越して人々に愛されるタイムレスな名靴を生み出してきたのだ。
そんなベルルッティの理念は、新しいブランドメッセージ「現代のスプレッツァトゥーラ」にも込められている。“sprezzatura”とはルネサンス期のイタリアの外交官であり、作家でもあったバルダッサーレ・カスティリオーネが1582年に出版した著書『宮廷人』で著したイタリア語。その意味は“技巧を隠し、自分がしていることをあたかも労せず無意識にできたかのように見せる、ある種の無造作さ”を表す言葉と定義されている。
何事にも人一倍こだわりながら、それはおくびにも出さない。そして、決して気負うことなく、いつだって自分らしく自然体に振る舞う。そんな肩の力が抜けた、計算された無造作さ、ナチュラルな優雅さをまとった人物=現代のスプレッツァトゥーラこそ、他の追随を許さない独創的な技術やデザインを生み出しながらも、それを声高に主張せず、あくまで顧客に寄り添うモノづくりを行なってきたベルルッティが、靴や服を通して表現する理想の人物像なのである。

2023年春夏コレクションより発表された「ロレンツォ ドライブ」は、まさにベルルッティが現代のスプレッツァトゥーラへ贈る新作だ。傑作「アンディ」の流れを汲むスタイリッシュなアンライニングローファー「ロレンツォ」をベースに、ドライビングシューズより着想を得て誕生したモデルであり、極薄のスエードを用いた仕立て。さらにアクセルワークをサポートしつつ、歩行性にも優れた2分割のラバーソールを採用し、驚くほどの屈曲性と軽量性、そして柔軟な履き心地が堪能できる。
スポーティモダンな洗練されたデザインとスエードのリラックス感が相まって、ジャケットスタイルからデニム、ショーツまで、気負わずさらりと合わせられるカジュアルシューズに仕上がっている。また18世紀のカリグラフィよりインスパイアされたベルルッティのアイコン柄「スクリット」がさりげなくあしらわれており、知的な優雅さも漂う。それは肩肘張らずに自分らしさを大切にする、現代的なライフスタイルにふさわしいシューズであり、名靴として末長く愛される一足となるだろう。
ベルルッティ
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