日本国内のフードロスは約570万トンに対して、かくれフードロスは約1940万トンの3倍強と推計されており(2019年農林水産省調べ)、把握されていないものも含めるとさらに膨大な量で、実はかなり大きな問題である。
このかくれフードロスをアップサイクルし、付加価値の高い食材へ昇華させようと立ち上がったのが、フードテックベンチャーのASTRA FOOD PLANである。過熱水蒸気を用いて食品の風味の劣化、酸化、栄養価減少を抑えながら、乾燥と殺菌を同時に行う過熱蒸煎の技術を用いた装置を起点に、新たな循環型ビジネスを展開している。同社代表の加納千裕氏に、そのビジネスモデルと可能性を聞いた。
大量生産、大量消費の時代に
「この過熱蒸煎機は、20年以上の歳月をかけてようやく製品化にこぎつけたんです」実は加納氏は、父親から技術を継承して会社を立ち上げている。加納氏の父がこの装置の開発に着手したのは1999年頃。SDGsが策定されたのが2001年なので、当時はまだまだ大量生産、大量消費の全盛期。今でこそ、フードロスの問題は多く語られるようになったが、当時その課題解決に挑戦しようというかなり先見の明があったと言える。
「父は大手コンビニチェーンの役員を務めていたので、言わば大量生産、大量消費の立役者でした。一方で農家や食品生産の現場に出向いた際、廃棄される大量の食材を目の当たりにして、『これは将来的に大きな社会問題になる、何とかしなければ』という使命感が芽生えたようです。食品添加物の人体への影響も気にしていたため、過熱蒸煎機が作れれば、食品廃棄問題の解消はもちろん、食品添加物もいらなくなると考えて開発を始めました」