天然ガス輸出も万能薬とはならない。英経済紙エコノミストの調査部門エコノミスト・インテリジェンス・ユニット(EIU)のグローバル予測担当ディレクター、アガテ・デマレは「ロシアの天然ガスパイプラインは、ほぼすべてが欧州向けだ。新規敷設は高くつき、高度な技術も必要となる。時間とコストがかかる」と指摘する。ロシアがガスの代替供給先を何よりも必要としている今、中国の支援の動きはにぶい。天然ガス開発には時間と先行投資が求められるが、中国はロシアにそれを割きたくはないのだ。
中国はエネルギー輸入削減計画を掲げつつ、ロシアからの石油購入量を増やしており、2022年10月にはロシア産石油の購入額を102億ドル(約1兆3700億円)に倍増した。中国の石油精製会社はロシアが提供する割引を活用している。ロシアにとって石油輸出の拡大は難しいことではないと証明されたわけだが、これによってロシアが膨れ上がる財政赤字と経済の停滞から救われることはなかった。ロシアがOPECプラスに減産を迫れば(それは景気後退を招く恐れがある)、原油価格が上昇し、すでに過熱している世界経済にさらなるインフレ圧力がかかり、ロシア経済をも弱体化させる結果になりかねない。