こうした問題を解決するため、我々は社会として、異性から見て魅力がない、あるいは「存在しないも同然」とみなされていると感じている人々と、どう向き合うかを考え直す必要がある。孤独な人々に対する嘲笑、いじめ、ミーム化、排斥が蔓延する現状を変える必要があるし、自己改善に向けた支援的アプローチが一般的に得られるようにする必要がある。
疎外感をもつ人々がみな、有害なコミュニティに助けを求めるわけではない。次に紹介する知見は、インセルコミュニティは、もともと精神疾患的傾向を持つ人々を引き寄せやすいというものだ。
2. インセル男性は未治療の深刻なメンタルヘルス問題を抱えていることもある
学術誌『The Journal of Sexual Medicine』に掲載された論文によると、インセル的特徴のスコアが高い男性は抑うつ、不安、被害妄想を示す傾向にあった。さらにこうした男性たちは、インセル的特徴のスコアが低い男性たちと比べて、不安型の愛着スタイルをもつ確率が高かった。この研究では、被害妄想、抑うつ、不安型愛着スタイルの指標で高いスコアを示すことが、インセル的特徴が出現する予測因子であることも明らかになった。
論文の筆頭著者ジアコモ・チョッカ博士は、あるインタビューで「医療従事者や心理学者は、患者が逸脱し、インセル化するリスクを評価する訓練をしておくべきだ」と述べている。
恋愛に関係した抑うつ、不安、被害妄想の症状を訴えてセラピーを受診する人々がインセル的な態度を示すかどうかに注意深くあることが、こうした有害なサブカルチャーの台頭を抑える鍵になる可能性があるわけだ。
いったん感化されてしまうと、インセル男性は、治療的介入に対して容易に反応しなくなる可能性が高い。というのもインセル男性は、こうした介入について、彼らをコントロール・支配して、おとなしい「ベータ」男性に変えるための企てとみなす傾向にあるからだ。
なお、この研究では、被害妄想や抑うつのスコアが高くても、安定した愛着スタイルをもっていれば、インセル的思考様式に取り込まれずにすむ可能性が示されている。
結論
インセルコミュニティは、メンタルヘルス問題を抱え、社会から逸脱した男性たちの集団だ。こうした男性たちは、ムーブメントに加わる前から疎外感を抱えている。そして、こうしたコミュニティを心の支えとみなし、それが、さらなる有害性、魅力低下、絶望に至る落とし穴であることに気づかない。カウンセリングや支援、孤立した人々へのリソースの提供といった、メンタルヘルスへの予防的介入が、こうした問題に対処する最善策と言えるだろう。
(forbes.com 原文)