同作は北野にとって、『アウトレイジ 最終章』以来6年ぶり、19作目となる監督作品となる。北野自身が手がけた小説が原作で、戦国時代の“本能寺の変”が舞台。北野も原作・監督・脚本・編集を務めたほか、ビートたけしとして羽柴秀吉を演じる。
北野の初期の代表作である1993年公開の『ソナチネ』と同時期に構想し、30年もの長きに渡って温められていた同作。巨匠・黒澤明が生前、「北野くんがこれを撮れば、『七人の侍』と並ぶ傑作が生まれるはず」と期待していた、念願の企画となる。
戦国時代における大事件である“本能寺の変”が、北野独自のバイオレンスと笑いをはじめとしたエッセンスにより、戦国武将や忍、芸人や百姓といった多彩な人物の野望と裏切り、運命とともに描かれる。
北野は会見冒頭に、「構想30年は3週間の間違いだと思います」と笑いを誘ったが、続けて、「時代劇はNHKの大河ドラマをよく見るが、どうも綺麗な出世物語で、人間の業や欲、裏切りがあまり描かれていない。『自分が撮ればこうなる』という発想だった」とコメント。「だいぶ苦労したが、今回の映画が出来上がったのは、素晴らしい役者さんとスタッフのおかげだと思います」と感謝を口にした。
テーマは、織田信長の跡目をめぐる、さまざまな欲望と策略が入り乱れ、血肉が飛び散る“山崎の戦い”から、“本能寺の変”までが中心となる。北野は、「ここ何年間は歴史ブームで“本能寺の変”がよく出てくるが、起こった理由については、資料を読むと各小説家や歴史考証家が言うには、80くらいの説がある。その中で、自分が考えるのは秀吉の大返しは出来レースで、裏で秀吉がかなり動いたな、というのが映画の構想」と説明した。
また、「男同士が絡み合うシーンをNHKは避けたりするが、実は殿様に命をかけることは、そういう関係であるというのが自分の考え。そういうシーンを描かずに戦国時代を語るのはおかしい」と言及し、自身の思いを明かした。
「戦国大名なんて悪いヤツら。一般の人たちが死んでも何も関係ないと思っている。その残酷さと生と死をバックボーンとした生き方、男同士の愛ではないけど死を前にした関係を、上手く描ければよかったかなと」
キャスティングについては、「脚本を書きながら、『これはこの人』という風に」とコメント。当初は自ら出演するつもりはなかったというが、「出ないつもりだったら、スタッフが『出ないとちょっと』と。でも、『なんでこんなジジイの秀吉がいるんだよ』って。光秀はハゲという、横山ノックみたいな頭になるからお笑いになっちゃう」とジョークを飛ばし、会場を笑いで包んだ。