3月20日に開催された第2回では、ゲストとしてカインズCHRO(最高人事責任者)の西田政之氏が登場。Forbes JAPAN Web編集長の谷本有香、1000社以上へCHRO機能の強化支援実績を持つLUF会長の堀尾司氏の2人が、「人的資本経営」の時代に西田氏の目指す人事のあり方、企業のあり方に切り込んだ。
全国231店舗、約2万5000人の従業員を擁するカインズ(2023年3月末時点)。西田氏は、2021年9月から新たなる人事戦略「DIY HR(R)」を掲げ、組織の大改革に取り組んでいる。激動の時代、「個」が輝き成長できる職場にするために、人事は何ができるのか。同社で実際に取り組んでいる施策をふまえ、示唆に富んだセッションの一部をレポートする。
「個」の時代、カインズが注力する1on1コミュニケーション
技術革新やESG投資の浸透などを背景に、人的資本経営が叫ばれる昨今。個人が会社に従属する時代は終わり、会社は社員が自己実現をするための場へと進化することを求められている。そのために、今の経営者や人事が取り組むべきことは何なのか。西田氏は次のように説明する。「社員にどのような投資をして、全社のパフォーマンスに寄与するように成長してもらうかを考えるのが人事の仕事。その際に不可欠なのが、社員の成長のベクトルが会社の目標と合っていることです。今の時代、会社と社員は対等で、双方のメリットを見つめ合いながら、協働していくことが求められています。社員一人ひとりに寄り添い、良質な成長を促すプラットフォームの構築や仕掛けづくりが、人事の重要な役割だと考えています」(西田氏)
2021年6月に西田氏がカインズへジョインした際、まず重視したのは現場社員の声だという。1on1を通じ、徹底的に「個」と向き合った。それは現在も変わらず、西田氏自ら店舗を巡回し、パート・アルバイト社員から店舗責任者まで、立場に関係なくコミュニケーションを続けている。
しかし前述の通り、カインズには約2万5000人の従業員がいる。企業としてその一人ひとりと向き合い、寄り添い続けていくことは、決して簡単ではない。より規模が大きい企業なら、なおのことだ。それについて谷本から問われると、西田氏は「人事のトップが自ら率先して『個』と向き合う姿勢を示し、社内にムーブメントを起こすきっかけを作ることが重要だ」と話す。
そして、組織の上部から働きかけていくことも有効な手法だと、西田氏は自社の例をあげて説いた。西田氏が同社にジョイン後、初めて実施した施策は、コロナ禍にも関わらずあえてリアルで行った、社長以下の役員を対象としたコミュニケーション研修だったという。
「この1on1のコミュニケーションやコーチング研修を、社長以下のマネジメント層から開始して全社へカスケードしていったことで、今後、個との対話を大切にして経営していくのだという企業としての姿勢を明らかにしたことが、まずは大事だったと思います」(西田氏)