DXは、その難しさで知られている。当社Forrester(フォレスター)が行ったアンケート調査「Business And Technology Services Survey, 2022」では、ほぼすべてのサービスの意思決定者が、DXの遂行にあたって困難を抱えているか、困難を予測していると回答した。
しかしだからといって、選ばれた少数のデジタルネイティブだけが持っているDXの裏技があるわけではない。フィットネスプランと同じように、定期的に新しいプログラムが発表され、自分が求める変身(トランスフォーメーション)を実現するための最新の秘訣(ひけつ)が紹介され続けている。
だが、エクササイズと同じように、DXを成功させるための基礎は、基本を正しく理解することから始まる。当社の調査結果からは、多くのDX施策が今も基本的な部分で苦戦していることが示されている。
誤解を恐れずに言えば、変革を真に成功させるためには、高度なコンセプトが欠かせない。フォレスターでは、これらの高度なコンセプトを日々応用し、未来に適応した企業になるための限界に挑戦する顧客を支援している。しかし、基本が出来ていない場合には、高度なコンセプトは役に経たない。
調査では、1300人以上のサービスの意思決定者に、DX活動を実行する際に遭遇する主な課題を聞いた。上位に挙げられたのが以下の課題だ。
1位 本業との両立
最も多かった課題は、「従業員が他の仕事の責任と両立する形でDX実行に割く時間を確保できるかどうか」だった。社員は本業の傍ら、DXプロジェクトを任される。日常業務に不測の事態や緊急事態が起きると、DXはストップしてしまう。こうした衝突や脱線により、DX施策が一進一退を繰り返し、従業員は互いにぶつかり合う優先事項を調整するために、フラストレーションを感じるようになる。
2位 機能ばかりに関心が向いている
機能面でのロードマップにのみ焦点を当てた組織では、成功に必要なデータ基盤を構築することができない。たとえソフトウエアの質が良くとも、データや統合のエラーは機能性に重大な影響を与える。こうしたことから、「データの問題」が変革の課題として2番目に挙げられた。このような問題は、変革の後期に発生することが多く、チームは次々と出現するデータの問題を、モグラたたきのようにつぶしていく羽目になる。テスト中にこれらが表面化すると、ソフトウエアやDX全般に対するエンドユーザーの信頼が損なわれる恐れがある。
3位 DXの外部委託
3番目に多い課題は「非テクノロジー系のスキルや知識の不足」だ。専任のビジネスリソースを持たないIT組織に委ねられたDXは、期待に応えることはできない。導入するソフトウエアは、自社のビジネスを体現するものでなければならない。これを達成するには、自社のビジネスがソフトウエアに十分に関与し、自らを表現する必要がある。