それから10年後「Writer」と呼ばれるジェネレーティブAIのスタートアップを設立した2人は、シリアの古代都市にちなんで命名したPalmyra(パルミラ)という大規模言語モデルを企業に提供している。
ジェネレーティブAIの最大の問題点は「幻覚」と呼ばれる誤った情報を吐き出すことだが、WriterのCEOのハビブは、同社の言語モデルの最新バージョンが「事実と異なるものを作ることはない」と主張する。それは、同社の言語モデルが、創造性よりも正確さを優先するよう設計されているからだという。
Writerの顧客には、ウーバーやデロイト、スポティファイ、アクセンチュアなどが含まれている。さらに、米国の医療保険大手のユナイテッド・ヘルスは、WriterのHIPAA準拠の言語モデルを用いて、健康保険プランを医療機関や患者に説明するためのブログやメールを書いている。
会計大手のインテュイットは、財務データに基づくブログ記事を作成し、ロレアルは商品説明やプッシュ通知の文言を作成している。Writerの顧客は、ポッドキャストや動画をソフトウェアに読み込ませ、その内容を文書コンテンツに変換することも可能だ。
ツイッターも以前は同社の顧客だったが、費用を支払わないため、Writerは2月下旬にイーロン・マスクが所有する同社を訴えたとハビブは説明した。
Writerの言語モデルは、顧客ごとにカスタマイズしたものが用意され、公開情報に加えて、企業が用意したPDFなどの独自のデータを使って学習を行い、合計300億のパラメータを形成する。データは各社のクラウド上に保存され「特定の事実がどこから来たのかを示すための道筋が用意されている」とハビブは話す。
同社は、フォーブスの注目AI企業リスト「AI50」の2023年版に選ばれたが、資金調達の面では、まだライバルに追いついていない。評価額が1億5500万ドル(約206億円)のWriterは、Insight PartnersやUpfront Venturesなどから2600万ドルを調達している。これに対し、コピーライティングAIツールのJasperは、すでに1億2500万ドルを調達したユニコーン企業だ。