SMALL GIANTS

2023.04.18

めがねのまちの市長が語る、鯖江の宝|クレイ勇輝

クレイ ところで、鯖江市の中で眼鏡はどのように作られているのでしょうか。

佐々木 実は、鯖江市内に大きな工場があって、そこで皆さんが働いて作っているわけではないんです。

眼鏡づくりは金属製フレームだと250もの工程があるといわれます。鯖江市内には小さな工場や会社、500社以上の関連企業があって、各工程それぞれが分業化されています。

分かりやすく言いますと街全体がひとつの眼鏡工場なんです。

眼鏡の注文が入ると鯖江を1周するうちに1つの眼鏡ができあがる。それが鯖江の特徴です。
クレイ 眼鏡職人さんがたくさんいてひとつひとつ作っていく、そんなイメージを勝手にしていたのですが、そうではないということですね。

佐々木 たとえばメガネをデザインする会社やフレームのチタン素材をプレスして成型したり、メッキを施したりと、各工程ひとつひとつさまざまな工場があります。

クレイ なるほど。その中で少し話は変わるかもしれませんが、鯖江市は1955年の市制施行以来人口が増え続けている、という国勢調査の結果が出ていますね。これは眼鏡産業が盛んなことと関係はあるのでしょうか。

佐々木 鯖江市の人口は現在約6万9千人です。増加していたのは2021年までで、現在は減少期に入っています。

とはいえ、他の地域では既に減少傾向にあった時に鯖江だけ増加し続けていたことは事実です。いったいどういうことだろうと考えたのですが、そこにはいろんな要素があると思います。

たとえば鯖江市は福井県の中心に位置していて、南北を県都の福井市と越前市に挟まれているんです。どちらのまちにも通えて生活しやすい。そういった立地的な理由はあると思います。

クレイ ベッドタウンなんですね。

佐々木 もうひとつあると思います。

よく、「鯖江の宝は何ですか?」と訊かれることがあるんですが、私は迷わずに「市民力です」と答えています。市民の皆さんがまちづくり、行政に積極的に参加して下さるんですね。そういったまちは、やはり生活していて楽しいですよね。それが人を呼ぶことに繋がっていると私は思っています。

産業もそうですけど、ものづくりに興味を持つ若者が県外から今も入ってきているんです。

眼鏡づくりの環境で育まれた分業と協力、そして職人さん同士が切磋琢磨する環境がこの地にはあるのかもしれません。
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撮影 = 岡田清孝

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