同社は、製造が容易なバッテリーセルを新たに設計し、高度に自動化した生産システムで製造することで、世界的なバッテリーメーカーになることを目指している。フレイルは先日、ノルウェーのモー・イ・ラーナに小規模な工場ラインを開設し、半固体のリチウムイオン電池の製造を開始した。
同社は、2025年までにノルウェーの「Giga Arctic」とジョージア州アトランタの「Giga America」という数十億ドル規模の工場を建設する計画だ。生産能力は、合わせて50ギガワット時になる予定という。
フレイルの共同創業者でCEOのトム・エイナー・ジェンセン(Tom Einar Jensen)は、「当社のバッテリーは、ギガワット時規模で製造できた場合、従来に比べてコストを25%下げることができる。それが可能な理由は、製造工程を劇的に簡素化したことにある。従来は17段階あった工程を8段階にまで減らしたことで、鉄やアルミニウム、ケーシング、ハウジングなど、あらゆるものを削減することができた。これにより設備投資は50%以上、エネルギー消費量は60%以上、工場スペースは1ギガワット時当たり80%削減され、従業員1人当たりの生産量は従来の3倍に増える」と語る。
フレイルは、2021年に特別買収目的会社(SPAC)との合併でニューヨーク証券取引所に上場したが、まだ収益は上げていない。現在の時価総額は約11億ドル(約1460億円)だが、テスラやGM、BYD、CATL、パナソニック、フォード、LG化学などのライバル企業は事業規模も資金力もフレイルを大きく上回る。これらのライバル企業は、数十億ドルをつぎ込んで世界中に新しいバッテリー工場を建設している。しかし、この分野は新規参入者にも大きなチャンスを与えている。
フレイルが製造するパウチセルは、テスラのバッテリーパックに搭載されている円筒形のリチウムイオンセル「2170」や、ビール缶サイズの「4680」よりもサイズが大きい。同社は、マサチューセッツ工科大学のYet-Ming Chiang教授らが設立したバッテリースタートアップ「24M」から技術供与を受けてバッテリーを生産している。ジェンセンによると、フレイルはテスラとは異なり、EVの乗用車ではなく、エネルギー貯蔵システムと商用車に焦点を当てているという。
「エネルギー貯蔵向けアプリケーションが最も大きな成果が見込めるため、我々はこの分野に焦点を当ててスタートした。確定分と条件付きのオフテイク契約を通じて、130ギガワット時分以上に相当する需要を獲得した」とジェンセンはいう。