ハウステンボス買収の資産運用会社、PAG会長がビリオネアに

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香港を拠点とするアジア最大級の資産運用会社PAGの共同創業者で会長のウェイジャン・シャン(単偉建)がビリオネア(保有資産が10億米ドルを超える富豪)の仲間入りを果たした。現在69歳のシャンは、香港のプライベートエクイティ分野では数少ないビリオネアの一人だ。

運用資産残高が500億ドル(約6兆6000億円)のPAGは、3月の規制当局への提出書類で、シャンが同社の単独筆頭株主であることを明らかにした。シャンは25~49.9%の株式を個人名義で保有しており、フォーブスは、このPAGの持ち分のみで保有資産が10億ドルに達したと推定した。

ただシャンはフォーブスに対する電子メールで、この推定資産額は「不正確で、的外れ」だと指摘。自身はフォーブスの長者番付に入るような資産を保有していないと主張したが、詳細は明らかにしなかった。

PAGは、12のオフィスで約300人の投資のプロたちを擁し、アジアを中心に700億ドル以上を投資している。同社は昨年8月、日本最大級のテーマパークであるハウステンボスを約1000億円で買収することに合意した。

PAGは昨年3月、香港市場での新規上場(IPO)を申請。上場により20億ドルを調達し、時価総額は150億ドルに達する可能性があったが、ブルームバーグによると、その後の市場環境の変化を受けて上場計画を延期した。

以前はパシフィック・アライアンス・グループの名称で知られたPAGは、元マッキンゼーのコンサルタント、クリス・グラデルが2002年にヘッジファンドとして設立した企業だ。シャンは、TPGキャピタルに12年間在籍し、同社の中国のトップディールメーカーとして活躍した後、2010年にPAGに入社し、プライベートエクイティ事業を立ち上げた。

TPG以前は、JPモルガンのマネージング・ディレクターを務め、ペンシルバニア大学ウォートン校の助教授を務めていた。昨年3月、中国のEコマース大手アリババの取締役に就任した。
 
北京生まれのシャンは、1966年から約10年間続いた文化大革命の時代の中国で育ち、10代の頃には内モンゴル自治区のゴビ砂漠で働いた。数年前には回顧録「ゴビ砂漠からの脱出―私の中国/アメリカ物語」を出版した。

北京国際商経学院で英語を学んだ後、サンフランシスコ大学で経営学の修士号を、カリフォルニア大学バークレー校で経済学の修士号と経営学の博士号を取得。この時に論文を指導したのが、当時、カリフォルニア大学の助教授を務めていたジャネット・イエレン現米財務長官だった。

イエレンは、シャンの著書「ゴビ砂漠からの脱出」の序文を書いており、「シャンの人生は、たとえ偶然であっても中国とアメリカが手を携えれば、どんなことが可能であるかを示しています」とつづっている。

forbes.com 原文

編集=上田裕資

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