アマゾンは、複数の小売チェーンと提携し、顧客がこれらの店舗に商品を持ち込んで無料で返品できるようにしている。しかし報道によると、Whole Foods(ホールフーズ)、Amazon Fresh(アマゾンフレッシュ)、Kohl’s(コールズ)の店舗の近くに住む利用者は、UPS店舗で返品する場合には1ドル(約132円)を請求されるようになるという。
アマゾンの動きは潮流を変え、他の小売業者も返品無料のルールや条件を変更・撤廃することにつながるかもしれない。
返品は企業にとって大きな負担
返品は企業にとってコストがかかる。米国では2021年、過去最高の7610億ドル(約101兆円)分の商品が返品されており、オンラインで購入された商品の21%近くが返品されている。返品された商品は集約・仕分けされ、在庫に戻されるため、コストがかさむ。2021年のアマゾンの売上高が約5000億ドル(約66兆円)だったことを考えると、返品の数と額は驚異的なものだ。返品にかかる環境コストは言うまでもない。返品は大量の炭素排出とごみを生む。米国における返品は年間1600万トンの二酸化炭素を排出し、58億ポンド(約260万トン)の埋め立てごみを生み出している。持続可能性を優先する企業が増えているが、返品は環境に配慮した取り組みとは相反するものだ。
顧客エクスペリエンスと予算との兼ね合い
ブランドは長年、顧客体験を向上させるために返品無料を優先してきた。最近の顧客は、特にオンラインショッピングの増加に伴い、手軽な返品という利便性を求めている。ある調査では、84%の消費者が、返品に関する体験は小売業者の印象を左右すると回答した。無料返品サービスは他社との競合で大きな強みとなり、新規顧客の獲得につながる。79%の消費者が、無料返品はオンラインショッピングの際に考慮する大事なポイントだと答えている。返品に関するルールや条件が緩い店舗は顧客忠誠度が高い傾向があり、人々は返品無料のサービスを提供する企業で多く買い物をする。
しかし、企業側は無料返品にかかる費用の負担によって収益を大幅に減らすことなく、顧客に良いサービスを提供するというバランスを取らなければならない。「顧客第一」はすべての企業にとって重要だが、無料返品はもはや持続可能ではない。