12日に英医学誌ランセット・ニューロロジーに発表された論文によると、この検査方法はパーキンソン患者の脳に異常に蓄積するたんぱく質「αシヌクレイン」をシード増幅分析という手法で定量的に調べるもの。1100人あまりをこの方法で検査したところ、パーキンソン病と診断されている患者を約90%の精度で識別できた。診断されていない人や、嗅覚障害や動作の困難といった症状が出る前の人でも特定できたケースがあった。
この検査方法によって、約200年前にパーキンソン病が発見されてから初めて、臨床評価や患者自身の報告ではなく、客観的で生物学的な方法でこの病気を見つけたり経過観察したりできるようになった。αシヌクレインの蓄積はパーキンソン病の初期に起こり、その後、特定の神経細胞が失われることがわかっている。
研究リーダーのひとりであるマイケル・J・フォックス財団の「パーキンソン病進行マーカーズ・イニシアチブ」のケネス・マレク博士は、生物学的な手法による検査の有効性が確認されたことでパーキンソン病研究の「新時代が到来」したとし、今後、臨床ケアのあり方や、治療や予防、完治を探っていく方法は変わっていくだろうと意義を強調した。
フォックス「パーキンソン病が必ず治る」未来へ
フォックスは、研究にかかわった人たち全員に感謝の気持ちを示すとともに、「パーキンソン病を必ず治る病気にしていくことに一丸となって取り組んでいる」とコメントを寄せた。今回の研究には参加していないドイツの神経科学者、ダニエラ・ベルクとクリスティーネ・クラインも、この検査方法によってついに「パーキンソン病の生物学的診断の基礎がつくられた」と述べ、臨床上あるいは身体面の変化が見つかる前にも病気を発見できるようになったと高く評価した。ただ、脳脊髄液の採取は従来の検査方法に比べると体への負担が大きいため、αシヌクレインを手がかりにパーキンソン病を見つける方法を普及させていくには、血液検査など負担のより小さい方法の開発が必要になりそうだとの見解も示した。
パーキンソン病は進行性の神経疾患で、症状は人によって異なるものの、歩行困難などの運動障害、震え、記憶喪失、嗅覚障害、うつなどが挙げられる。病気の進行を遅らせたり症状を軽減したりする薬はあるが、根本的な治療法はない。
米国立神経疾患・脳卒中研究所(NINDS)によると、米国にはパーキンソン病と診断された人が50万人ほどいるが、実際の患者数はもっと多いとみられる。パーキンソン病と診断される人の数は2040年までに倍増すると予想されている。
(forbes.com 原文)